第7話 傷だらけの2人

四季島シキシマくん!」


 遠くでアイヴィーさんの声が聞こえた。


「痛い……痛いよ……」


 背中が熱く、心臓の鼓動と共にズキズキと痛む。


「出ろ!【役妖えきよう金剛力こんごうりき!」

〈グォォォォッ!!〉


 アイヴィーさんの背後から、筋肉隆々きんにくりゅうりゅうの男が出てくる見えた。そいつはシオリを掴むと、遠くへ投げ飛ばした。次は僕を抱え、木の陰へと隠れた。


「ごめん、ごめんね……」


 アイヴィーさんはひたすら謝っていた。


「……ぃ……じょ……ぶ……」


 僕は大丈夫と言いたかったが、口が上手く動かなかった。


「【宿妖しゅくよう】は人間の魂を喰らって強くなる、と聞いていたけど、本当だとは思わなかった……くそっ……」


 僕の狭い視界に、悔しさと焦りを混ぜ合わせたような表情をしている。この様子だと、今まで【宿妖】を相手にして、宿主である人間を殺したことは無さそうだ。危機的状況だが、なんだか安心した。

 僕はなんとか手を動かし、アイヴィーさんの肩を軽く叩いた。だんだんと痛みが引いてきた。いや、感覚が麻痺まひしてしまっているのだろうか。

 僕は体勢を変えると起き上がることに成功した。


四季島シキシマくん! 無理したらダメよ!」


 僕はアイヴィーさんの手を握った。


「アイヴィーさんも……無理したらダメだよ……」


 涙目でこっちを見ている。

 アイヴィーさんが僕の背中の傷の様子を見てくれた。その表情は驚きの表情に変わっていった。


「四季島くん……傷がほとんど治ってる……!」

「え!?」


 確かに痛みは無くなってきていたけど、そんなにすぐに治るとは思えない。しかし、ここで嘘をつくようなことはしないだろう。


「傷がなんで治ったのかはあとで解明するとして、今はシオリをなんとかしよう」


 アイヴィーさんは小さく頷いた。

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