第4話 妖怪

――神社


 妖怪……? 僕は自分の耳を疑った。


「妖怪って、あのアニメや漫画とかに出てくる怖いやつだよね……?」

「そうよ」

「猫娘とかぬりかべとか?」

「まぁ、昔にはそういうのもいたらしいわ」

「……その前にちょっと気になったこと聞いてもいい……?」

「えぇ、なにかしら?」

「もしかして、日本語……上手……?」

「まぁね。母さんに教えてもらってたから」

「転校初日に、日本語があまりできないって……」

「あぁ、あれは余計な関わり合いを無くすためよ。下手にしゃべって、ワタシに興味持たれると面倒だし」

「なるほど……そういうことなのか……」


 さっきまでの恐怖は何処へやら。僕はすっかりと落ち着いていた。

 僕らは神社の本殿にある、小さな階段に腰掛けた。


「妖怪って、あんまり聞かないわよね」

「僕らにとっては空想のモノっていう印象でしかないね」

「そう……。実は、妖怪は身近にいるものなの」


 僕はにわかには信じがたかった。今までこの辺に住んでて、妖怪の姿を見ることはもちろん、妖怪の噂話すら聞いたことすらない。


「妖怪ってのは大きな分類の1つで、その中に【憑妖ひょうよう】【宿妖しゅくよう】【役妖えきよう】【顕妖けんよう】の4種類いるの。特別に1つずつ説明してあげるわ」

「どれも聞いたことないな……」

「まぁ、そうよね。【憑妖】は人間に取り憑いている妖怪。そこに倒れてる男の人も【憑妖】だったの。これはいわゆるほこりみたいなものだから、簡単に取り除くことができるわ」


 僕は頷きながら話を聞く。


「次は【宿妖】ね。【宿妖】は人間に宿ってしまった妖怪。簡単に言うと【憑妖】が酷くなったモノね。【宿妖】になった妖怪は、人間の魂と深く結びついてしまっているの。だから、【宿妖】を取り除くには、その【宿った】人間ごと殺さなければならないわ」


 僕はゾッとした。

 アイヴィーさんに聞きたいことがあったが、ここはぐっとこらえた。


「次は【役妖】。こいつは簡単に言うとワタシたちの味方。妖怪を飼いならして、利用できるようにしたモノなの。ワタシは母さんから譲り受けた1体を持っているわ」

「じゃあ、そいつがいれば妖怪退治も簡単になるってことなんだね」

「まぁ、そうなんだけど……。【役妖】を使うと体力を消耗するから、使い放題って訳でもないの。今日はあの男の人を人気ひとけのあるところまで運ぶときに使おうと思ってるから温存中ってとこ」

「なるほどねぇ……」

「で、最後に【顕妖】。これはさっき四季島シキシマくんが言ってた、自分で肉体を持った妖怪のこと。今はもう【顕妖】はほとんどいなくて、残っている奴らも頭がいいから、そうそう人前には出てこないわ」

「へぇー、そうなんだ。妖怪の世界も時代が変わってるんだね」

「そうなの。例えば、かくれんぼが上手な奴もいるわ」

「……?」


 僕が理解できないでいると、アイヴィーさんは立ち上がった。


「そこの草むらに隠れてるのはわかっている。出てこない場合はこちらから攻撃するわよ?」

「え!? 妖怪がいるの!?」


 ガサガサと草が揺れ、妖怪が姿を現した。

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