四うさ パラダイスからの便り

二十八羽 ゲーセンちゃちゃちゃ

「質問です。造船となると大がかりになりませんか? 佐助殿」


 ドクターマシロは、俺が即興で作った船の模型を見ている。


「そうなるな。覚悟の上だし、アイデアもある」


「木を用いるのですよね。どこからそれを得るのですか? 勇者、佐助様」


 ぴったんこと小声で言っても聞こえるでございますよー! 女神ヒナギクよ、後ろから腕を回すのは、止めて欲しい。バストが、バストは確か、Eカップ。俺達とってもEカップル? とんでもない!


「女神ヒナギクさん、離れてけらっしゃいよ」


 そうだ、そうだよ。心の武士よ。


「やだぶ」


「離れなさい」


「だんめ」


「おしおきですよ」


 俺は、引き離そうとしたら、背負い投げになってしまった。らららら? 流石の女神だけあって受け身もせずに、空中で回転して着地した。女神ヒナギク、恐るべし。


「真血流堕さん、島の俯瞰図を出してくれ」


「ほいほいのさっさ」


 真血流堕さんにプロジェクターに投影して貰った。真血流堕さんも俺もプレゼンテーションは、人並にできるようになっていてよかった。しかし、このガラパパパ諸島の皆、知的レベルが高いよな。美少女うさぎ島に引きこもって、どこから各々の文化を持ち寄ったのか。


「ここが、今、皆がいるドクターマシロのゲームセンターだ。基地だな」


 ユウキくんがいれてくれた、あたたかいコーヒー風味のクワワをいただいた。結構、俺は安らぎます。


 ◇◇◇


 そうそう。ゲーム機が色々とあるな。皆がかたくなっているから、声を掛けよう。


「おやつにチョコのコインゲームをやってもいいよ」


「やった! ボク、お腹が空いていたんだ。お話を聞きながらでもいい?」


 あー。ユウキくん、何で俺にぴとっとひっつくの? 確か、程よいカップのB……。俺は、おっぱいは、ばぶちゃんで卒業したのだ。もう、これ以上ぱいぱいのことに振り回されないのだよ。


「離れましょう」


 首を横に振る。佐助くんのお陰だと自作の歌をささげてくれる。無駄に可愛い! ユウキくん、デレ上手じゃないかい! ふおー。色白にさくらんぼの頬もくちびるも愛らしいですね。でも、心の武士は、どうどうどうどうだよ?


「話が進まないので」


「だって、佐助くんはさ。ボクのキノコンの毒にもやられなかったし、おかもちくんも沢山持ってくれたりって、優しいんだもん」


 縁日ストローを避けただけだよ。それに、おかもち七人前は、ちょっとなー。運動になるから、ユウキくんにお肉がつかない訳だ。それに、大樹様の上は涼しいから、夜ならばお風呂かサロンかゲームセンターで食べたりするのかもな。


「慌てることはないよ。ユウキくんもさ、くつろいでな」


 俺は、ゲームの景品のコインがチョコだったので、金紙をむいて食べた。


「むぎ?」


「分かりましたよ、真血流堕さん」


 ねだられて、半分むいたコインを渡した。俺のかじったのなんて、飾っても何も出ないよ。でー、食べるんだ!


「もひゅもひゅ。キノコン入りですかね?」


「真血流堕殿、ご名答」


 ◇◇◇


「ミコさんは、何でよく遊ぶの?」


 俺は、失言したと思った。ミコさんは、辛く灯台にこもっていたのだ。ゲームセンターに最近は訪れたりしないだろうな。


「すまない。ミコさん」


 ミコさんは、おちょぼ口の端を少し上げた。


「ミコは、キャンディーボックスの入ったクレーンゲームが得意なの。どれが落ちるか分かってしまうし。操作も上手いのよ」


「直ぐにキャンディー天国になるからな、ミコ殿は」


 ドクターマシロも嬉しい困り顔をしている。ミコさんがこちらで遊んでくれて、Dカップのお姉さんとしては、目も細めたいよな。


 ういーん。ういーん。かちゃ。


 本当に上手だ。相当の手練れだな。キャンディーつかみ一刀流か。おめおめ。


 それで、隣のゲーム機に移る。うお! 何とびっくりうさぎさん。ぬいぐるみキャッチャーに、もふもふ達が。何々? ナオちゃんは、もしかして、本物ですか? 可愛いなあ。けど、ピンチだ!


 ちゃりっとゲーム用のコインを入れて、ドクターマシロがぬいぐるみキャッチャーに向かう。


「自分、一回で取りに行きます」


「そのようですね。ドクターマシロなら、行けますよ」


 ドクターマシロが、こちらをちらりと見た。ゲーム機に戻る瞬間、ポニーテール越しに、今まで聞いた事のない甘いボイスが届いた。


「佐助殿のためにも……」


 俺は、感嘆することしきり。もふっと、取り出し口から、ナオ=ライオンラビちゃんが現れた。瞬く間に、美少女ナオちゃんに戻る。凄いや。どうなっているの?


 ◇◇◇


「えー。美少女うさぎさん達と真血流堕さんもお聞きください。話は、造船についてです」


「島の北西にあるケケー鳥のいる森は、苔が多くて材木に向かない」


 納得した顔が並ぶ。何だろう。俺って先生みたいだ。


「すると、迷いの林からとなる。あのダンジョンの激しい林だ。俺は、二度と一人で行かないと決めた程、迷い易い」


「佐助殿。では、そこ以外となると?」


 ドクターマシロの質問には、正確に答えたい。


「いや、問題は、迷いの林の木を伐採するところにない」


「あたしね……」


 その問答のさなか、ドクターマシロに抱かれた美少女ナオちゃんが、何か言いたそうだ。


「迷いの林を抜けると、人買いさんがやって来るところに出るのが怖いの千枚浜って岩浜へは、行きたくない」


「ナオちゃん、怖いよな。だから、尚のことドクターマシロといつも一緒にいたいのだよね」


 俺も気持ちは一緒だよ。


「俺は真血流堕さんと一緒に迷いの林を抜けようとした。空間の歪みに巻き込まれたのか、声がよく響く建造物を見つけたっけな。アメイジング・グレイスを聴かせてくれた真血流堕さんに感動したのだ。まるで、精霊が舞い降りたようだから」


 精霊だと思った刹那、俺の恋する方になったのだろう。心の綺麗な真血流堕さん、そして、うつつではない場所へ行ってしまった時、どれ程愛おしいと思ったか。


「そこは、チャペル――」


 再会の地だ。


「皆にとって、キノコンの胞子も出たりして、どんな思いをしているのか分からない。和傘を既に用意していることから、この件は一回きりのことではないと安易に推察される」


 ファンタジックなできごとに、真血流堕さんをどれだけ想っているか、胸に沁みた。


「だが、俺と真血流堕さんには、大切な場所だ」


 勿論、皆もと言おうとして、あの胞子と雪を思い出した。


「チャペルなのだから、勿論結婚式を挙げられるのだろうな」


「そうですね」


「皆は、美少女うさぎ同士、結婚式を挙げるのか?」


「勇者、佐助様。それはありませんわよ。あるとすればですが」


 CHU・CHU・CHU!

 CHU・CHU・CHU!


「気が早いだろう」


 ポインターで、チャペルのありそうな場所を示す。そこに女神ヒナギクがやって来て、音感の悪いダンスをお披露目してくれた。ハイヒールがコツコツとして、ずりこける。自分のCHUの音楽だろうよ。


「マップが見えない」


「冷たいわ。勇者、佐助様」


 俺達は、影絵か!


「実況、絶叫、真血流堕アナ。がっかり惨状」


 真血流堕アナ、エアマイクを持って登場だい。


「おつかれーしょん!」


 俺の造船は、まだ始められない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る