因縁と呼ばれるもの
その時、魔女は何を思っただろう。
魔女は――自分は、何を思っていただろう。
(死にたくない)
それだけだろうか。懐に忍ばせた果物が問いかける。
(どうして私だけがこんな目に)
ずっと幼い頃、ヴァンにそうやって泣きついたこともあっただろうか。今更そんなことを思い出したのは、どうしてだろう。
(どうして、あの子は)
浮かんだのは1人の少女の姿。自分とは違う。自分が生まれながらにして手に入れることが出来ないと決められたものを、生まれながらにして全て手にしているもの。
あの子にもう少し可愛げでもあったならば、自分はこんなに苦しまずにいられているのだろうか。
こんな醜い気持ちを、抱えずにいられているのだろうか。
「……ねえ」
背後から声がする。階段を上る音は聞こえていた。相手が誰かも、その足音で何となく分かっていた。
「……何かしら。ウィット」
「あんた、様子おかしかったから。様子、見に来ただけ」
本当に、可愛げがない。それでもあちらから、こうして話しかけに来てくれたのは僥倖と呼べるものだった。
「丁度よかったわ。あなたに話したかったことがあるの」
視線は窓の外に向けたまま。青々と清々しい空が広がっている。
「お話、聞いてくれるかしら。ウィット。……いえ――」
目を伏せる。振り返ると、小さな小さな童女の姿がそこにあった。
「スノウホワイト」
その名を聞くと、童女の瞳が大きく見開かれた。
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