独白
夕食を終え、寝る準備を行う。ココの内心は、その中も、ザワついていた。
湖の、アウルの言葉が、耳を離れない。
「……ねえ、ウィット」
「なあに? ココ」
くるりと丸い眼がココを捉える。
「……そろそろ、さ。何で家を出たのか、教えてくれない?」
「………」
そしてその目は、気まずそうに、逸らされた。
「ごめんね、ウィット。聞いちゃったんだ。君が……お姫様、なんだって。ほんとはウィットが教えてくれるまで、黙ってようと思ったんだけど」
「……」
「……ごめんね」
黙り込む様子に、謝罪を送ることしか出来ない。アウルからではなく、ウィットから聞きたかったのは、本当だ。でも、つい訊ねてしまったのも、紛れもない自分自身だった。
「ココが謝ること、ないわ」
引き結んだ唇が開かれる。声音は少し、暗かった。
「あのね。お父様と、毎朝お食事をとるの。私には、お母様がいなくて……、私を産んですぐ、亡くなってしまったから。お父様とすごく、仲が良くて、だからいつも通り、少し、お話もした、んだけど」
「……うん」
話し始めるも、目は逸らされたままだ。軽く相槌を打ち、先を促す。
「……急にね。お父様が、言い始めたの。『お母様が欲しくないか』って。これまで、お母様のことを大切にしていたから、他の誰とも結婚しなかったお父様が……、急によ? それで、怒って、喧嘩しちゃった。……お義母様なんか要らない、って言っても、聞いてくれなくて。きっと、本当は新しいお母様が欲しいのは、お父様の方なのよ。それなのに、私を理由にしたのが、なんか、すごく、いやで」
そこで言葉が切れる。ううん、とココも、唸り声を上げた。
「……難しいお話だね」
ココには想像しかできない。家族の話に口を出すことも出来ない。きっとこれは、ウィットが自分で決めなければならないことだ。
「……本当は、分かっているの。お父様、寂しいんじゃないかって。だから、賛成してあげたいの。お父様が本当に愛する人が出来たなら、……私も歓迎して、迎えたいって、そう思うの」
でも、と言葉が続く。
「怒って飛び出してしまったから。きっとお父様も、怒っているわ。……そう思うと、帰りたくなくて。ここにいるのも、楽しいから、つい」
「……そっか」
頷いた。自分が口を出さなくても、やっぱりウィットの中に答えはあった。なら、あとは、その背中を押してあげることくらいなら、できるだろうか。
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