最終話 赤い毛糸の指輪

「結菜っ!」


「え? 蓮? え、そんなに走ってどうしたの?」



 学校から駅に向かう中間辺りで結菜の姿を見つけた蓮は走りながら名前を叫んだ。


 結菜は久々に会話した蓮、そして何故か走ってきた彼に驚いていた。



「おい、てめぇ。結菜に何してんだよ」


「何って? 酷いなー俺は結菜と付き合ってるんだよ。君こそ何? いつもいつも告白しようとする男の邪魔してさ」



 蓮は結菜と手を繋ぐ平山に攻め寄った。


 だが、平山は罰ゲームで告白した上、今まで蓮がしてきたことを把握していたようだ。



「武藤に全部聞いたから知ってんだよ。お前、ボーリングで負けて罰ゲームでこいつに告白したんだろ?」



 武藤とは、蓮に罰ゲームのことを話した彼だ。



「え……罰ゲーム?」



 結菜は蓮が言うことに理解できずにいた。



「ああ、こいつはボーリングで最下位になった。で、1位だった藤田に言われて……結菜に告ったんだ」


「……なんだー。全部知ってるんだ。本当の告白のように演技しながら言ったんだ。まさか本当に付き合えるとは思わなかったけどね」



 平山は結菜から手を離すと不敵に笑いながら答えた。



「お前っ、ふざけんなよ!」


「やめてっ! 蓮……お願いだから」



 今にも殴りかかりそう蓮を結菜は後ろから抱きしめ止めた。



「勝手にイチャついてなよ。この子と付き合ったけど可愛いだけで楽しくなかったしね。別れよ」



 平山は結菜に視線を合わせるように腰を丸めそう告げると駅の方へ去って行った。



「結菜……大丈夫か?」



 遠慮気味に声をかけた蓮は振り向き腰に手を回している結菜に声をかけた。



「……ぅ、れ……ん。好きだって言ってもらえて……嬉しかったの……。休みの日に映画館と水族館に……行ったの。あたしは楽しかったのにな……」


「泣くなよ。お前が楽しかったんならよかったじゃん……ほんとお前は、ホイホイ騙されるなよ」


「……だま、されて……ないよ」


「騙されただろうが。ほら泣きやめよ」



 蓮は腰に巻かれた腕を解き、泣いている結菜の頬に手を当て涙を拭った。



「だ……だって、嬉しかったんだもん。……あたしを、好きだって……初めて言ってもらえたから……」


「初めてじゃないだろ? 俺がいる。俺は幼稚園の時から……ずっと好きだったんだぞ、結菜」


「え、幼稚園の……時から?」


「ああ、ほらこれ」



 蓮はカバンからお財布を取り出すと、中から……ある物を手に取ると結菜の指に付けた。



「え、これ……。まだ持ってたの?」


「当たり前だ」



 結菜の指には幼い頃互いの指に結んだ毛糸で作られた指輪が付いていた。



「え……じゃあ、なんで中学の時怒ったの?」


「中学……。ああ、あれは……。お前が人の部屋来てはベットでマンガ読んだり人の腕に絡みついたりと。……まあ男は我慢するのが大変なんだよ」


「あ……そうなんだ」


「そういうこと。俺は……好きだよ、結菜。付き合って下さい。……返事は?」



 蓮は結菜に視線を合わせるように腰を屈めた。


「れ、ん……。あたしも、あたしも好きだよ」



 こうして2人は無事に付き合うことになったのだった。






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幼なじみとの約束 ~赤い毛糸の指輪~ 織山青沙 @korotibi23

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