第4話 真実

「そういえば、結菜ちゃん付き合ってるみたいだよ」



 平山と結菜が付き合い始めて1週間がたった休み時間。


 窓際の一番前に座る陽翔は後ろの席に座る蓮に話しかけた。



 陽翔も蓮達と同じ中学校だった為、蓮と結菜が幼なじみだったことを知る人物だ。



「は? 誰と?」


「1組の平山と」


「平山と結菜が?」


「そう。1週間くらい前からだったかな」


「へえ」


「怒るなよ」


「怒ってねえよ」



 蓮は否定しているがいつもより声は低く、椅子に座るも足はブラブラと揺れていた。


 周りから見ても怒っているのは明らかだった。



「怒ってるだろ? 結菜ちゃんが付き合ってるって知ってから。蓮、本当は結菜ちゃんのこと好きなんじゃないの?」


「好きじゃねぇよ。あんな奴。誰とでも付き合ってろよ」


「(あいつは……俺が幼稚園の時に言った言葉なんて……覚えてねぇんだろうな)」



 蓮は校庭に視線を向けた。



 ♢♢♢




「なあなあ知ってるか? 平山と3組の美少女付き合ったらしいぜ」


「美少女? ああ、なんだっけ……杉本だ」


「あれ、本当に実行したんだな」



 放課後、男子生徒がそんな会話していた。



「なあ、今のどういうこと?」


「え……。あ、蓮か。脅かすなよ」



 初めに話を持ちかけた人物が蓮の姿に驚いた。



 そこは蓮のいる2組の教室。


 部活に行こうとした蓮は廊下側で話す会話が耳に入ったようだ。



「どういうこどだ?」


「そんな怖い顔すんなよ。だから、俺ら3人と1組の平山含めた3人の合わせて6人でなゲームやったんだよ……」



 その彼が蓮に話したことはこうだ。



 ある休日、平山含めた6人はボーリングに行き勝負をした。



 それは負けた者は勝った者の言うことを聞くという条件付きで─── 結果負けたのは平山。



 そして、勝った男子生徒が平山にした命令は……3組にいる美少女、杉本結菜に告白することだ。



 そう、今回結菜が告白されたのは─── 罰ゲーム。



「くそっ、陽翔! 俺部活休む」


「え? おい、蓮」



 話を聞き終えた蓮はカバンを持ち陽翔に部活を休むことを伝えると教室を飛び出した。



「おい、咲良。 ……結菜は?」


「結菜? もう帰ったよ。彼氏と一緒じゃないかな? 毎日一緒だし」


「くそっ」



 3組に顔を出すも結菜は教室を出た後だった。


 廊下の壁を左の拳で殴った蓮。


 怒りを抑えきれずにいた。



「なにー? 愛しの結菜が取られて悔しいの?」


「ああ、そうだよ。あんな奴に取られてたまるかよ」


「えっ、まじ……」



 冗談で言ったつもりが素直に肯定されたことに驚く咲良であった。


 驚く咲良をそのままに蓮は外へ出た。


「(結菜どこだ? 結菜! 今までは俺が防いできたのに……なんで告られてホイホイ付き合ってんだよっ……)」



 そう、3組の美少女と言われながらも結菜が一度も告白されなかった理由。



 それは、今まで告白しそうな男がいると蓮が声をかけ、告白を防いでいたのだった。



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