第3話 突然の告白
「あ、あの! 少しいい?」
「え? あ、はい」
それは突然の事だった。
10月上旬、お昼を食べ終えた結菜がトイレから教室に戻る時の事だった。
結菜は顔も名前も知らない男子生徒に声をかけられた。
彼は黒色の短髪にたれ目という可愛らしい顔立ちをしていた。
そして、結菜は声をかけてきた彼の後を追った。
着いた先は屋上のドアの前。
屋上は出入り禁止の為、ここまで来る生徒はまずいない。
「えっと、俺……好きです」
「え? あ、あのまず名前聞いても……」
「あ、ごめんなさい。俺、平山大地(ヒラヤマダイチ)と言います……。杉本さんが好きです。付き合って下さい」
「(ど、どうしよう……。初めて、告白された。えっと、こういう時はどうすれば……断る? けど断る理由もないし。付き合ってみる?)」
突然の告白に柚愛は考え込んだのであった。
「あ、あの……ありがとうございます。えっと、まだ平山君のことよく知らないので……友達からで良ければ、お願いします」
「え、ほんとに? マジか……」
「うん」
「じゃあよろしくね。杉本さん……いや、結菜」
「よろしくね」
2人は互いの連絡先を交換し2年生の教室がある3階まで降りたのであった。
その時、平山が去り際にニヤッと笑ったことに……結菜が気づくことはなかった。
結菜のクラスは3組、平山は1組の為クラスは若干離れていた。
「あ、帰ってきた。結菜どこ行ってたの?」
「あ、ちょっと……」
結菜は咲良に先程あったことを話した。
「え! そんなことがあったんだ。あれ? でも今までは……」
「今まで?」
「あ、なんでもないの。気にしないで」
咲良は言いかけた言葉を止め、その事について触れることはなかった。
♢♢♢
「結菜、帰ろう」
「あ、平山くん。うん」
放課後、後ろのドアから声をかけてきたのは平山だった。
「おい、平山。今のなんだよ」
「今の? ああ、俺付き合うことになったんだ。結菜と」
「え、おい! あれマジだったのかよ。大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
平山は廊下側に座る男子生徒と何やら話し込んでいた。
「あ、お待たせ」
話が終わった所を見計らって結菜は声をかけた。
「大丈夫だよ。行こっか」
昇降口を出た2人は並んで歩いた。
「ここならもう大丈夫かな」
「なにが大丈夫なの?」
「ん? ほら生徒がもういなくなった」
平山は後ろを振り向き生徒がいないことを確認した。
「えっ! あ、あの」
そして、結菜の手をとり握ったのだった。
「何慌ててるの? 手繋ぐのは普通だよ」
「えっと、あたしは友達からって……」
「そんなの必要ないよ。付き合って徐々に知ってけばいいんだよ」
戸惑う結菜を他所に平山は笑顔を浮かべながら答えた。
「結菜は電車?」
「あ、うん。平山くんは?」
「俺も電車。その平山くんっていうの無しな」
「えっと……だ、大地くん?」
「そう、よく出来ました」
平山は名前を呼んだ結菜の頭を繋いでいる手と反対の右手で撫でた。
名前を呼んだ恥ずかしさから頬がほんのり赤くなっていた結菜。
そして頭を撫でられさらに真っ赤になったのだった。
駅に着くまでの15分間2人は互いに自己紹介も兼ねて交代に質問を交わした。
まずは家族構成。
平山の家は弟が1人と両親の4人家族だ。
結菜は一人っ子の為、3人家族。
誕生日や血液型、好きな食べ物、趣味等を聞いた2人。
「結菜またね」
「ばいばい」
駅に着いた2人。
電車は別の方向だった為、改札を入った所で別れた。
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