第1話 好きじゃない

「おい、蓮! お前また告白断ったんだって?」


「なんだよ、もう知ってんのかよ」


「なんで断ったんだよ。あの子可愛かったじゃん」


「好きじゃないんだから、しょうがないだろ」


「うわー、モテる男は言うことが違うね」



 ここは、あおさ高等学校。

 季節は夏休みが終わった9月中旬。


 2人組の男子生徒がある休み時間に廊下を歩きながら話していた。


 最初に声をかけた人物は白石陽翔(シライシ ハルト)。


 彼は黒色の短髪で眼鏡をかけており、知的なイケメンだ。


 そして、バスケをやっているだけあり程よい筋肉を付けた長身だ。


 もう1人の"蓮"と呼ばれた彼は富田蓮(トミタ レン)。


 蓮も陽翔と同じくバスケ部に入っており程よい筋肉だ。


陽翔より身長は低いが顔の良さで学年一のモテ男だ。


 無造作にセットされた黒髪、パッチリ二重の瞳いわゆるかわいい系だ。


 その2人の声は大きかったようで教室まで丸聞こえだった。



「あんたの旦那、また告白断ったみたいだよ」



 教室の窓際、後ろの席に座る女子生徒は前に座る女子生徒へ話しかけた。


 話しかけた彼女の名は西田咲良(ニシダサクラ)。


 ショートカットに切りそろえられた髪、斜め分けされた前髪、猫目の瞳。


 綺麗な顔立ちをしていた。



「だから、旦那じゃないって」



 咲良の前に座る女子生徒は恥ずかしそうに答えた。


 その生徒の名は杉本結菜(スギモト ユナ)。


 肩くらいの長さまで伸ばされた黒髪、ギリギリ目にかからない前髪、パッチリ二重の瞳、鼻筋が通った彼女はクラス一の美少女。


 だが、本人はそんなことを知る由もなかった。



「幼稚園の時に言われたんでしょう」


「あれは、幼稚園の……ことだもん、もう蓮は覚えてないって……それに蓮にも好きな子の1人や2人いるだろうし」



 結菜は自分でそう答えるも、いや好きな人がそんなにいたら嫌だなと思い俯いたのであった。



「結菜はさ、告白……しないの?」


「こ、告白!? しないよ! それに好きじゃないし」



 咲良の言葉に結菜は勢いよく顔を上げ否定した。


 その顔は真っ赤に染まっていた。



「しないのかー。好きじゃないのかー。そのわりには顔、真っ赤だけど」


「こ、これは……違う」



 咲良に指摘された結菜は両頬を手のひらで抑え否定した。



「まあ、そういうことにしとくわ。中学の時までは一緒に登下校してたのに、最近見なくなったよね」



 結菜と咲良は中学校からの友達だ。


 蓮と結菜が幼なじみだと知る数少ない友達。


 その為、中学校の時と比べ蓮と結菜が一緒にいないことが咲良にとっては疑問だった。



「最近はね……蓮もあたしと違って部活入ってるし」


「(そういえば、いつから一緒じゃないんだろ? 前は常に蓮と一緒だったのにな……)」



 結菜は、そう考え込んだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る