第14話 レオンの本気?
「ああ、ごめんなさい。私の家は少し壊された程度ですで、どうぞ」
墓地から戻ってきたお姉さんがいった。
「お邪魔しちゃ悪いでしょ」
アルマが苦笑した。
「いえいえ、こちらです」
お姉さんは近くの家に入った。
「……この香り。香草霊茶?」
お姉さんが淹れてくれたお茶に、僕は思わず反応してしまった。
「はい、この辺りの特産です。よく分かりましたね」
「……うん、師匠が好きで僕から巻き上げたお金で買ってたんだ」
「巻き上げられてるって自覚あったんかい!!」
アルマが苦笑した。
「……そりゃ分かるよ。でも、なにも言えないから払ってただけ」
「ゆ、許せん!!」
「あ、あら、なにかあったようですね」
お姉さんが苦笑した。
「こいつ、こんなだから騙されまくってるんだがなんだかでさ。文句の一つも言えないからなぁ」
「そうですね。なにかいえるタイプではなさそうです。怖いですよ、内に秘める方は。大爆発したら手に負えませんから」
「……そんなに怖くないよ。時々、山がなくなるくらいだもん」
僕は笑みを浮かべた。
「馬鹿者、この上なく怖いわ!!」
「素敵ですね、山一個ですよ。どんなに筋トレしても、さすがに無理です」
お姉さんが笑った。
「当たり前だ、山一個ぶっ飛ばすってどんな筋力だよ!!」
アルマが笑った。
「なに、マッスルボディに憧れてるの?」
「はい、筋肉っていいじゃないですか!!」
「……確かに、凄い上腕二頭筋だったね」
アルマがフッと真顔になった。
「今回はあれだったけど、生き残った人もいるからさ」
「はい、また壊れた集落の建て直しからやればいいのです」
僕はひっそり呪文を唱えた。
「……おい、この子が今なんかやったぞ。私には分かる!!」
「えっ、なにやったんですか?」
僕は笑みを浮かべた。
「……生き残った人を全員マッスルボディにしてみたよ。凄いね、今にも寿命を迎えそうなお爺さんが、通りでポージングしてるよ。みてくれば?」
「な、なにを!?」
お姉さんは慌てて家を飛び出た。
「馬鹿者、なにをしてる!?」
お姉さんが飛び込んできた。
「あ、あの、亡くなった方が全員生きている上に、集落が壊れていないんですけど。しかも、全員超絶マッスルボディ!?」
「ちょ、ちょっと待て、ついていけない!?」
アルマも飛び出た。
「……あーあ、またやっちゃった。これバレたらシャレにならないぞっと」
僕は笑みを浮かべた。
「おい、なにやった。白状しろ……」
「……いったら真面目に僕の首が飛んじゃうって。ハッキリ言って、法的には重罪だからね、紛れもなく」
アルマの怖い目を避け、僕は明後日の方をみた。
「だから、内に秘める方は怖いのです。我慢できなくなってしまったのでしょう。全員生き返らせた上に超絶マッスルボディにして、オマケに集落も直してしまった。こんなところでしょう。つまり、なかった事にしたのです。なんとなく分かりました」
お姉さんが苦笑した。
「……お、お前、そんな事出来るの?」
「……僕、これでも大賢者の称号持ってるんだ。これ持ってると商店街で割り引きとかあるけど、一番大きいのは制限なしで魔法の研究が出来る事。こういういけない魔法も作り放題なんだよ。もちろん、使ったらダメだよ。捕まって首が飛んじゃう」
アルマがポカンとした。
「……なにげに、凄いヤツだったぞ」
「……凄くないよ。魔法だけだもん、アルマみたいに剣で攻撃とか出来ないし、マッスルボディでもないし……
「……いや、もうマッスルボディはいい」
アルマが笑った。
「こりゃいい、使い魔冥利に尽きるぜ!!」
「使い魔?」
お姉さんが不思議そうに聞いた。
「おう、私はコイツの使い魔だぜ。偉そうだけどな!!」
「……偉そうでいいんだ。僕がこれだから」
お姉さんが笑った。
「なんか変なコンビだとは思っていましたが、そういう事情でしたか。大賢者とは……滅多にお目にかかれないものですけれどね。さて、結局なにもなかったようですし、あまりお引き留めするのも心苦しいです。報酬というようなものをご用意できないのですが……先祖代々伝わる剣がありまして。剣をお使いのようなので、よろしかったらと」
アルマの目が輝いた。
「なに、そんなのあるの?」
「はい、ちょっとお待ち下さい。倉庫の奥なので……」
お姉さんが家の奥に行った。
しばらくして、なんだか凄そうな剣を持ってきた。
「私もよく分からないのですが、なんかいい感じの剣と……」
アルマの目が真剣なものになった。
「……間違いない。レーヴァテインだぞ。なんで、ここの物置に置いてあるんだよ!!」
「そんなに凄いものなんですか?」
お姉さんが聞いた。
「馬鹿野郎、凄いなんてもんじゃない。存在自体が伝説級のとんでもない野郎だよ!!」
「……な、なんか、また変な剣っぽいね」
お姉さんが笑みを浮かべた。
「これが、今回の報酬ということで……」
「い、いいのかよ、こっちが払いきれないくらい釣りが出ちまうぞ!?」
「……そ、そんなに凄いんだ」
お姉さんは頷いた。
「はい、これでは足りないくらいですよ。では、元の場所に送りますね」
僕たちは家の外に出た。
「……あっ、忘れてた」
僕は呪文を唱えた。
お姉さんが服がはち切れそうなくらいのマッスルボディになった。
「あら、これはいいですね。では、いきます!!」
お姉さんの脇に抱えられ、僕たちは空に舞い上がった。
今度は景色が見えるので、僕は何だか嬉しかった。
あっという間に元の場所に僕たちは戻った。
「では、ありがとうございました。また、どこかで」
お姉さんは素早く飛び去っていった。
「こら、なにやってくれてるの!!」
「……だって、我慢出来るわけないじゃん。使える魔法があれば使うよ。あの場合は」
僕はため息を吐いた。
アルマは笑みを浮かべた。
「まあ、それでこそ相棒だけどね。よし、いくぞ!!」
「……しまった。村で下ろしてもらえばよかった。
アルマが笑みを浮かべた。
「それは反則だね。自分の足で歩く。これ、旅の基本だ!!」
アルマは笑い、田舎道を歩き始めた。
「……まあ、これがいいのか」
僕は笑ってついていった。
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