第11話 出立 次の村へ

「うむ、世話になったな。道中の無事を祈っている」

「おう、楽しかったぞ!!」

 翌朝、僕たちは村を発った。

「さて……うわ、また遠いな」

「……まあ、どうしてもね。近いと喧嘩しちゃうからさ」

 僕たちは道を進み、一件の小屋のようなものを見つけた。

「おや……」

「……ああ、野良さんだね。村に住むのを嫌う変わり者だよ」

 アルマが笑みを浮かべた。

「そういうのが、面白いんだよね!!」

「……変わり者だからね。いっておくよ」

 僕を抱え、アルマが小屋に近寄っていった。

 風切り音が聞こえ、アルマが何かを素早く掴んだ。

「おう、さっそく歓迎してくれてるぞ。いきなり矢だぜ!!」

「……止めた方がいいって」

 アルマが剣を抜いた。

「突撃!!」

 剣を振りなにかを弾き飛ばしながら、アルマは小屋に向かって突進していった。

「おらぁ!!」

 小屋の扉を蹴破り中に入った途端、アルマの頭に金だらいが落ちた。

「……」

「……地味に嫌だね。これ」

 僕は笑った。

「ほう、この嫌がらせに負けずにくるとは、なかなか見上げた根性だな」

 笑みを浮かべたちょっぴり怖そうな人が、笑みを浮かべて近寄ってきた。

「あ、あのさ、あれだけ矢で攻撃して、仕上げが金だらいってなによ!!」

「うん、ほんの冗談だ。よくあの矢を避けたな。ハッキリ言って、殺すつもりでやったのだぞ?」

 アルマが笑みを浮かべた。

「だからよ、ああいうの得意でさ!!」

「なるほど、久々に面白い客人のようだな。その坊主はなんだ?」

 アルマは僕を床に下ろした。

「驚くなよ、私はコイツの使い魔だぜ!!」

「……馬鹿野郎、冗談にしては笑えないぜ」

 アルマがニヤッと笑った。

「ホントだもん、この子凄いぜ。ドラゴンをぶちのめしたぜ。一撃で!!」

 怖そうな人が目の端を上げた。

「なんだと、この貧弱そうなのがか。うむ、ちょっと確認させてもらおう。俺も魔法の心得くらいはある」

 怖そうな人は僕たちを見て、目を見開いた。

「間違いないな、そのデカいのはこの貧弱野郎の使い魔だ。信じられない事をしやがるな。気に入ったぜ」

「……気に入られちゃった」

「いいじゃん、コイツ面白そうだぜ!!」

 怖そうな人は笑みを浮かべた。

「よし、なんでこんなところをうろついてるか知らないが、勝手に休んでいくといい。俺は晩メシを狩ってくる」

 少し怖そうな人は、みた事のない何か武器のようなものを手にして、かなり怖そうな人になった。

「へぇ、猫って猟銃で狩りをするんだ」

「まあ、俺くらいだと思うがな。気がつかれないようにジワジワ接近して飛びかかるより、コイツで遠くからさっさと撃っちまった方が早いからな。ちょっと出てくる」

 何か見たことない武器を背中に担ぎ、鼻歌交じりにかなり怖そうな人は小屋から出て行った。

「……ほら、変なヤツじゃん」

「そうかな、別によくいるタイプだぞ」

 しばらくして、何か派手な爆発音が聞こえた。

「おっ、撃ったな!!」

「……なに撃ったの?」

 しばらくして、かなり怖そうな人が大きな鳥を引きずって帰ってきた。

「いや、うっかり気合い入れてデカいの狙っちまってな。食い切れないから、お前たちも少し食ってけ。今作るからな」

 武器を下ろして少し怖い人に戻り、明らかに料理不能の大きな鳥を相手に悪戦苦闘を始めた。

「はいはい、手伝うから!!」

 アルマがすかさず手伝いに入った。

「余計な事をするな。これは、俺の仕事だ」

「どうやったって無理でしょ。いいから!!」

 結局、手伝いどころかアルマが料理を始めてしまった。

「おい、お前の使い魔だろ。ちょっと黙らせとけ」

「……全然いう事聞かないもん」

 そのうち簡単な料理が出来た。

「旅人仕様だから、味付けは大雑把だぞ!!」

「なんだ、美味そうじゃないか。初めてみたぞ」

「……僕も初めてだね。美味しそうだぞ」

 アルマが笑みを浮かべた。

「おら、野郎ども。ガンガン食え!!」

「お、おう、元気いいな」

「……うん、いつもの事」

 僕は料理を一口食べた。

「……すげぇ美味しいぞ」

「うむ、これは美味いな。あとで教えろ」

「こんなもんでよければ、いくらでも教えるぞ!!」

 三人で勢いよく食べて、あっという間に食事が終わった。


「なに、旅をしてるだと。それはまた、随分酔狂な事をやっているな。だが、面白いな。俺も昔はあちこちいったものだ。無事を祈っているぞ」

「おう、お前も怪我とかすんなよ!!」

 野良さんの小屋を出て、再び道に戻った。

「……いい人だったね」

「まあ、殺すつもりで矢を撃ってくる恥ずかしがり屋だもん。根はいい奴だよ!!」

 アルマが笑った。

「……そこは理解できないんだけど」

「まあ、世の中にはそういうヤツもいるって事だ。さて、ガンガン歩くぞ!!」

 道を歩いていくと、破壊された馬車が道に転がっていた。

「……」

「いったでしょ、危険地帯なんだって。亡くなった人を弔おうか、最低限の礼儀だと思うよ」

 僕はため息を吐いた。

「……そうだね。大事な事だ」

 アルマが犠牲者を道の一角に集めた。

「どうするの?」

「うん、ほっとくと低級霊なんかに憑依されちゃって大変だから、憑霊防止の上で火葬が一般的かな。習っといて良かったよ」

 僕は杖を片手に、一見すると踊りのような印を切りながら、憑霊防止の長い呪文を唱えた。

「よし、あとは火葬なんだけど、魔法だけでやると結構派手な火炎系魔法でやらないといけないんだ。遊んでるわけじゃないよ」

「分かってるよ。そんな子じゃない!!」

 僕は印を切り杖をかざした。

 一気に炎上した炎によって、あっという間に骨になった。

「このままってわけにはいかないでしょ?」

「……はい、埋葬」

 道脇の地面に穴が開き骨を埋めて完了した。

「……万能野郎だな、気に入ったぜ」

「……そうでもない。出来ない事ばかりだよ」

 アルマは辺りに視線を走らせた。

「こういう時ってね、調子こいてまだどっかに潜んでいたりするぞ」

「……接近中、左からもの凄い勢いできてるよ」

 僕はそっちをみた。

「……ふーん、懲りない野郎だな。黙って消えてりゃいいものを」

 アルマが猛烈な殺気を放った。

 ゆっくり剣を抜き、小さく笑みを浮かべた。

「……手出し無用だね、これ」

 草原を走ってくる魔物に向けて、アルマは腰をやや低くして構えた。

 走ってきた勢いそのままに飛びかかってきた魔物が、一撃で両断された。

「フン……大した事ないわね」

 倒れた魔物の体を思い切り蹴飛ばし、アルマは剣を収めた。

「……うん、怒ってるね」

 アルマが笑みを浮かべた。

「よし、気を取り直していくぞ。村は遠いぜ!!」

 僕たちは道を歩き始めた。

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