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遊びに行って会長の練習を邪魔するわけにはいかないので、僕と渋さんは来た道を引き返した。時間を潰しに、正門近くの喫茶店にでも行こう、ということになった。
喫茶店に腰を落ち着けてコーヒーを頼むと、さっきの謎の話になった。
「どう思います?」
「五十円玉っていうのが一番不可解だね。十円、百円で賄えるから、一度に二枚以上出るものじゃないし、わざわざ集めたんなら両替するのはおかしな話だ」
「五十円玉の金属が欲しかったんでは? 融かして延べ棒にして売るとか」
「ますます両替する意味がなかろうが」
「いえ、調べてみたら実は大して価値がなくって千円に戻した、とか」
「調べてからやるだろうよ、そういうことは。お前さんのような与太郎じゃねぇや。両替するにしてもな、何も本屋でする必要はないんだ。銀行に行った方が手っ取り早いだろう」
「土曜日に両替する必要があるのでは? 土曜日なら銀行窓口は閉まってるでしょう」
「なんで土曜日に両替しなきゃならないんだ。それに、土曜日だってATMぐらい空いてるだろ」
「それはATMを使っちゃいけない理由があるんですよ」
考えても拉致があかない。
「ところでその本屋ってどこの本屋なんだ? お前どこでバイトしてるんだ」
「駅前の百貨店の地下一階にあるとこですよ。たまに会長が来ますよ」
渋さんは驚いて、
「え、会長が来るのかい。なんでわざわざ駅前まで行くんだ、あの人」
「規模が大きいからじゃないですかね。会長は本にもこだわりそうだし」
「いや、あの人は本をあんまり読まないんだ。そうか……。会長が来るとなると……」
渋さんは眉間にしわを寄せ、手を顎につけて考え込み始めた。何かに気付き始めた合図だ。僕は居ても立っても居られなくなって、
「え、もしかして、会長が犯人ですか?」
と急かしてしまった。
「いや、まぁ、ちょっと思いついただけさ。確信があるわけじゃない。それに、まだホワイダニットが残ってる。……もう一度部室に行って、会長に聞いてみるか」
「そんな、直接聞いたら謎解きにならないじゃないですか!」
「俺だってそんな不粋じゃねぇや。ちょっとしたことを聞くだけだよ。事件のことは言わずにな」
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