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ここは自分の夢の中だ。そうはっきりと認識できるようになったのはいつ頃だろうか? ただ憶えているのは、自分が不思議な力に目覚めてから見るようになった、という事だけ。
人気のない背の高い建物が立ち並ぶ、書割の雑踏に満ちた世界。見た目は中学の頃に修学旅行で東京観光した時に見た街によく似ているけど、人の声とかが無い分より殺風景に見えなくもない。光源が何処にあるかは分からないような真っ白な空の下に、この街はある。ショーウインドウの液晶や建物の中に見覚えのある景色が見えるので、より自分は自分の中にいるのだという実感が強くなる。
ここに来るたび、俺はさっさと夢から覚めたいといつも思ってしまう。何故なら自分の夢の中なんて退屈なだけだからだ。これなら荒唐無稽な夢らしい夢を見ている方がまだ楽しめる。現実の方がより刺激に溢れているし、退屈しない。
でも、ここは俺の夢の中……つまり、俺が作った世界。なら退屈という感情は、自分自身に向けられているって事だ。
「つまんねー人間だな、俺」
我ながら溜息しか出てこない。俺の中には何も無い。書割の雑踏も、液晶から見える過去も、言ってしまえば頭の中を反芻しているだけだ。大切な思い出なんてのも無い。
自分の中で自分に居心地の悪さを感じるなんてのも、珍しい体験だとは思うけど。そんな事より、現実で散歩している方がまだ楽しい。
こんな夢なんて早く覚めてしまえばいいのに。道端に大の字に寝ながら、ただ白いだけの空を眺める。来てしまったものはしょうがないので、どうやって暇を潰そうか……と考え事を始めようとした矢先に、不意に空に粒ほどの光が生まれる。かと思うと、それが流れ星のように動いて……消えた。
自分の夢に入れるようになって久しいけど、今のは初めて見るものだ。いや、そもそも空を見る事なんて殆ど無かったので、もしかしたら今までにも流れ星が出てきた事はあったのかもしれないけど。まあ、今はそんな事どうでもいい。
あれを見て感じたのは、予感。これから何かが起こるのかもしれないという期待。もしかしたら現実で、俺が待ち望んでいた変化が訪れるのだろうか? ただ、やっぱりここは俺の夢の世界なので、俺自身の願望が形になっただけという可能性もあるけど。
でも、それでもだ。
「やっと、何かが起こるかな」
初めて見たものに期待をせずにはいられない。良きにしろ悪しきにしろ、変化が訪れるなら俺の望むところだ。跳ねるように飛び起きて、より街の高い場所に移動する為の経路を探す為に歩き出す。
とりあえず、何かしていよう。今まで自分の夢をあまり探索してなかった事を少し悔いながら、自分の夢を散策し始めた。
かくして予感は大当たり、とはいえ一度以上は見た事のある“化物”には少しだけがっかりしたけど、しかし手に負えない大物じゃなくて良かったというところでもある。今は化物に襲われかけたヤツと一緒にファストフード店に立ち寄り、晩飯のついでに俺が分かっている事を教えようとしているとこだ。
「ほれ、お前の分」
カウンターから受け取ってきた食べ物と飲み物が乗ったトレイを差し出すと、如何にも内気そうな俺と同い年くらいの少年が席に座ったまま躊躇いがちに受け取った。未だ混乱冷めやらぬ、というワケでもないのは比較的落ち着いた仕草と表情を見ていりゃ分かる。
ショートカットで黒髪。身長は俺が170ちょっとくらいなんで、こいつはそれよりやや低いくらいか。この辺の学校の制服である紺色のブレザーを着ている、はっきり言っちまえば何処にでもいるような普通の高校生にしか見えない。ま、俺も同類に会ったのは初めてなんで、意外性はいるかもしれない次のヤツに期待かな。学校は違うけど俺も高校生だし、同年代の同類ってのも幸いだったかもしれない。
ただ、こいつは見た目の印象に反して肝が据わっているようにも思える。あるいは、わりと意地っ張りなヤツなのかも。目覚めたばっかりで無意識とはいえ化物に攻撃したんだから、底意地はあるだろうな。
「…ありがとう。えっと、もう質問してもいいのかな」
礼を言ってから、少年がこっちの意思を聞いてくる。席に付きながら数秒だけ考えて、自分の中の結論が変わっていない事を確認してから口を開いた。
「俺も大した事はしらねーし、期待に応えられるかどうかは保証できねーけどな」
今まであの“化物”と“力”に関して、相談できる人間なんて一人もいなかったからだ。何となく同じように能力を持っている人がいるような気はするんだけど、確証はない。ただ、目の前にその一人目がいる以上、嫌でも期待しちまうってのはあるな。
頬杖をついたまま飲み物を飲みつつ少年の次の言葉を待つと、彼はやがて意を決してように頷いた。感情が表に出易いのか、分かり易いヤツだな。
「あの化物が何なのか、分かる?」
「分かんね」
率直に疑問に答えてやると、少年は少し怪訝そうな顔をした。ま、そんな顔をするだろうとは思ってたので、続きを言おうと口を開いた。
「ただ、アレは人の多い場所に出易いってのだけは分かってる。あと、普通の人間は見えない事、襲わない事も確認済みだな」
「そっか……やっぱり、他の人には見えてなかったんだ」
少年は俺の言葉を聞いて納得したのか、頷いてから飲み物を口に含む。
「普通の人は襲わないっていうと、ええと……君も何度か襲われた経験があるの?」
俺を指すのに丁度良い単語が浮かばなかったのか、悩んだ末に君と来たか。そういやまだお互い名乗ってもなかったし、ここいらで教えてもいいか。
「
自分の荷物が入ってるスポーツバッグの中から筆記用具入れを取り出し、中からボールペンを取り出して紙ナプキンの上に名前を書いて見せた。
「この字な。ついでにそっちの名前も書いてくれ」
「あ、うん」
俺の手からペンを取って、少年も自分の名前を書き出した。
「んで、だ。あの化物は今まで俺しか襲った事が無くて、もしかしたら俺の幻覚でしかなかったのかなとも思ってたんだけどな」
「…そんなに頻繁に襲われるの?」
若干の恐れからくる疑問が少年改め、勇輔の口から出てくる。腹が決まってるならともかく、あんまり好戦的にも見えないし当然の反応か。
「いいや。でもまあ、決まって事件か揉め事が起こった時に出てくる傾向があるんで、そういうとこに近寄るとやっこさんは出てくるね」
だからこそ人の多いところを巡回して、化物がいないかどうか確かめてるんだけどな。普通の人間にゃ害はないっつっても、本当に襲わないままなのかは未知数だしなあ。少なくとも俺には襲い掛かってくるんで、対処してるってとこだ。能動的に引っかかるようにしてるのも大いにあるけど。
「なんつーか、感覚的には部屋の隅に貯まったゴミみたいなもんかな。知らないうちに何かが積もり積もって、形になるというか」
「……最初は陽炎のように見えたけど、もしかしたらあの時はまだ形になってなかったのかな」
勇輔が独り言のように呟いたそれは、俺にとっても新しい情報だ。ただこいつは力が目覚めかけていたってのがあるんで、だからこそよく見えてなかったのかもしれないけど。
「その陽炎は、たぶん俺や勇輔が持ってる“力”に引き寄せられてるな。理由は分からんけど、存在を確認するなり襲ってくるし」
「うーん……予防策は、やっぱり人の多いところに行かないくらいか。でも無理だよな、そんな事」
少し考えてから、勇輔は落胆に肩を落とす。
(そうだよな。普通はなるべく接触しないように図るよな)
俺は色々不明な事を実証する為にもどちらかと言うと積極的に関わってるけど、あの化物がヤバいものだというのは肌で感じている。今のところは全部退治出来てはいるものの、次も相手できるのが出てくるとは限らない。
「あの化物も、いつまで普通のヤツを襲わないでいるかって保証もないしな。だから定期的に見周りもしてる」
「……もしかして、その為のあの恰好だったの?」
勇輔が言うあの恰好ってのは、俺が助けに入ろうと駆け付ける時に着てた帽子とマントの事だな。今はスポーツバッグの中に仕舞ってある……モノを食う時とかは邪魔になるし。
「半分以上趣味だけどな。仮面も被ろうと考えた事もあったけど、視界の邪魔になるし何より不審人物扱いされるだろうから止めた。ただ化物は見えなくても例の力は見えるみたいだから、誤魔化しにはなるかな」
俺がやってる化物退治はボランティアどころか娯楽みたいなもんだ。今のところは派手な影響があったりはしない……むしろ人がいるせいで出来上がってるんじゃないかって推測も屁理屈ではない気もする。アレが見えてるのが俺と勇輔だけってのも証拠とするにはまだまだ押しが弱いので、それを今の段階で言うのは止めておくか。何よりこいつは力に目覚めたばかりだしな。
しばらく、机を挟んで互いにファストフードを咀嚼する沈黙が続く。この間に勇輔は考えを纏めているのだろうか、質問したい事が形にならないのか、時折咀嚼が止まったり、飲み物を持ったまま固まったりしている。とりあえず、今日はこの辺で解散しとくか。落ち着いて頭の中を整理する時間も必要だし、俺も俺で考える事はある。
「勇輔、俺の連絡先を教えとくよ。携帯」
今後付き合ってもらうかどうかはともかく、俺にとっては初めての仲間だ。この場限りの縁にしておくのも勿体無いし、こいつもまだまだ聞きたい事があるだろう。制服の内側から携帯を取り出して、液晶に電話番号を表示して突き出すと、勇輔もやや慌てるように自分のを取り出して操作を始める。
「えっと。僕のも教えておく」
やや躊躇いがちに画面を見せてきたので、俺も手早く登録を済ませる。今日会ったばかりの人間に電話番号を教えるのは抵抗があったんだろうけど、最終的に必要と思ったのかもしれない。
「相談したい事があったらメールでも入れといてくれ。時間がある時に返信する」
勇輔が頷いたのを見ながら、懐に携帯を突戻す。
……これで初の能力者同士のコネクションが出来た、ってとこか。こいつにとってある程度は有益だろうけど、願わくば俺にも得があるような関係になってほしいもんだな。
「明日も学校だろ? 疲れてるだろうし、早めに寝ときな」
「うん。あ、そういえばここの会計は…」
「今日は奢りでいいよ。気になるってんなら、明日の放課後にモール入り口な」
俺が勇輔に持っていったのは俺が勝手に注文したやつだし、ちょいと協力してもらいたい事もある。恩を売るつもりじゃないけど、次に会う為の理由が欲しいのは事実だ。
「それとこれとは別だよ。自分の分は払うから」
が、勇輔は思ったより強い口調で言いながら首を横に振る。金銭のやり取りに関しては厳しいらしい…こっちが生返事をする間にも財布を取り出して、きっかり食べた分の額を手渡してきた。
…うん、意外っちゃ失礼だけど、意志が強いわこいつ。
「いってきます」
家の中にいる家族への挨拶もそこそこに、玄関を開けて外に出る。今日も昨日と変わらず晴れていて、太陽がやや眩しい。雀なんかが鳴いてると、朝だという実感が湧いてくる。まだ少しだけ寝ぼけた瞼をこすりながら、住宅街を道なりに歩き出した。
平穏な日常というのは、その中だけにいると有り難みを感じにくいものだ。実際、俺も化物退治を始めるまではその尊さってのをよく分かっていなかっただろうな。
ま、俺は正義感や義務感で動いてるわけじゃないんだけどな。色々理由を考えても、結局は自分の為だ。
だから、今のところ俺の行動に勇輔を巻き込むつもりは全くない。今日会う約束をしたのはあくまで“力”に関する確認。それ以上の事は望んでない。
(そういや、あいつとは高校が違うんだよな)
勇輔のブレザーは紺で、俺が着てるのは緑だ。同じ学校だったら何かと都合が良かったんだけど、そこまで上手くはいかないか。
俺にとって高校は特に退屈でもないし、窮屈でもない。いずれは進学するのかもしれないし、就職するのかもしれない。将来像なんてのもあるわけはなく、未定のことばかりだ。
進学してからは一年経つけど、進級してからはまだ一ヶ月も経ってない。まだ二年目の前期なんだから、先の事を考えるのはもうちょい後でも遅くはないだろ。
「よっ。おはよ」
住宅街を悠々と歩く間に、中学の頃のクラスメートに声をかけられる。
「おう、おはよ」
声の方に振り向きながら手を上げると見慣れた顔が同じような仕草を見せる。俺に声をかけたヤツは中学の同期ではあるけど、同じ高校に通う同学年でもある。クラスだけは別々だけど、登校時間はほぼ被ってるんで、こうして並んで向かうこともある。
代え難いって程じゃないにしても、こうした平穏な日常が今日もまた過ごせる。ささやかながら、これが俺の化物を相手取る理由の一つなのかもしれないな。
再び夕暮れ時。街外れの雑木林の向こう側に、今時小川が流れているのどかな場所がある。ただ、それなりに整地されてるみたいなんで、小川と言うよりは湧き水の用水路だろうか。そこには俺が何年か前に運び込んだ小さい椅子が一つだけあって、雨に濡れないように防水シートを被せてある。秘密基地未満の休憩所みたいなもんだ。ただ環境的に虫除けスプレーは必須なんで、常に一缶常備してある。今はまだそこまで暖かい時期じゃないのが幸いだな。
本当はテントや机も置いておきたかったけど、俺や家族が持ってる土地じゃないしな。注意されればすぐ撤去出来るような荷物だけ置いてある。
「……よくこんな場所を見つけたなぁ」
感心しながら周囲を観察している勇輔は、やや物珍しそうだ。道すがらに聞いた話じゃ都会っ子ってわけでもなく、似たような片田舎から今年の四月に引っ越してきたらしい。ただ県境を二つほど超えてきたから、土地勘が全然無いとか。
「自分ちの土地じゃないから、持ち主に怒られたら使えなくなるけどな。だからたまーに似たような人目に付かない場所を探してるんだけど、なかなか無ぇんだよな」
あるいは移動手段を見つけるべきかな、とは考えている。子供の持ってる金じゃ土地を借りるってのも無理だしな。だったら気軽に遠出が出来る方法を手に入れた方が早いかもしれない。
「そういえば、なんでここに来たの?」
雑談(というよりは俺が質問)しながら目的地に辿り着いたはいいけど、理由までは説明してなかったっけな。シートに被せた椅子の隣に荷物を置いて、勇輔にも身軽になるように言うとヤツは頷いてその隣にリュックと学生鞄を置いた。
「昨日みたいな事があると困るだろうから、“力”を使う練習をやる。そのついでに、俺が“力”について分かってる事を教えるよ。勇輔にとっちゃ今はそっちの方が重要かな」
「って言われても、どうすればいいのか分かんないよ」
「慌てんなって。無意識でも昨日は使えたんだし、コツを覚えりゃすぐ出来るようになるって」
練習と言い出した俺にやや不安げな勇輔を宥めながら、人差し指を立てる。
「“力”を使う際に必要なのは、俺の場合はイメージ。例えば、この指の先に電球があるとする。ここに、電気を流し込む感じだな」
言葉にしながら、頭の中で自分の“力”が流れるのを想像する。心臓が血液を流すような、胸の奥から何かが生まれるような、そういったものを思い描く。
すると間もなく、肘から指先にかけて熱のようなものが生じてくる…と同時に、指先で「ばちばち」と弾けるような音と一緒に光が生まれた。
「なにこれ!? 超能力!?」
俺の指先を見ながら、勇輔がまるで生まれて初めて手品を見たかのような驚きを口にする。
「超能力……と言ってもいいかもしれないけど、なんか違うような気がすんだよなー」
お手本のようなリアクションをくれた彼に苦笑しながら、集中を止めると指先に生じていた紫電はすぐに消える。
「あくまで俺の場合だけど、こんなもんだ。見たまんま電気みたいに痺れる力ってワケだな」
勇輔の超能力という言葉を借りるなら、俺の能力はエレキネシスってやつになる。今のところ手からしか出した事は無いけど、その気になれば足や頭からでも出せるかもしれない。試してないけどな。
「ちなみにこれを使えば豆電球も光らせられる。停電時には便利かもな」
「れっきとした化学反応なんだ、さっきの」
「たぶんな。あ、ちなみにテレビとかは難しい、一定の電気量を送り続けるってのは結構神経使うんだ」
力に目覚めたばかりの頃にその辺に転がってた粗大ゴミの液晶テレビで試してみたけど、ものの見事に画面が爆発したのは黙っておこう。これさえあれば携帯も充電器要らずだ、と思ってたけどそんなに甘くはなかったな……少なからずショックを覚えた、未だに色褪せぬ嫌な記憶だ。
「俺たちが目覚めたものが超能力ってんなら、それぞれで別の能力って可能性もあるんじゃねーかな。ま、化物を相手に出来るものじゃないかもしれんけど、勇輔が襲われてた時に俺のと同時に当たってたんだし、少なくとも自衛は可能のはず」
「………うーん」
当時の実感が殆ど無いんだろう、出来るだろうと言った俺の言葉に難色を示す勇輔。
確かに、俺も目覚めたばっかりの時はしばらく半信半疑だった。自分から光るものが出てくるのが夢か錯覚だと思い続けてたしな……超能力の指南書なんてあるわけないし、あったとしても市場に出てるそいつは印税欲しさに嘘八百を書いたインチキだろう。
今みたいに自由に使えるようになるまでは俺も悪戦苦闘していたから、勇輔の気持ちはよく分かる。腕に力を入れてもダメだったし、気合いを入れるだけでもダメだった。最終的にイメージするのが大事だと気付くのに、二週間はかかったしな。勿論勇輔だって同じくらい時間がかかるかもしれない。
「とにかくやってみろって。イメージな、イメージ」
「イメージ、ね」
少し投げやりな口調ではあったけど、ようやくやる気を出して腕を垂直に突き出して目を閉じる。
(よし……あとはコイツがどういう……)
そう思ってる間に、勇輔の右手が光を帯びたかと思うと、すぐに見て分かるくらい輝き出した。
想像以上に早い“力”の発現に驚く間に、もっと驚く現象が起きた。わずかではあるものの勇輔の周囲から風のようなものが吹き出して、小さな石や砂、そして小川から水滴まで浮かび上がったのだ。
「……えっあれ!?」
すぐに異変に気が付いたのか、勇輔は眼を開いて自分が引き起こしたものを見て困惑する。と同時に持ち上がっていたそれは重力に従って落ちて、軽く砂ぼこりや水しぶきが巻き起こった。集中が途切れて、そのまま力が薄れるように掻き消えたようだ。
「びっくりしたのはこっちだよ! なんだ、やっぱり最初の一回でコツは身についてたんだな」
内心驚きと喜び、そして少しばかりの嫉妬に苦笑して思ったままを口にした。これなら、今後一人でも自分の身を守るくらいはできそうだ。当の本人はまだ困惑したままだけど。
一度目にしただけの俺も期待半分面白半分だったけど、二度も見れば疑いようもない。勇輔はしっかり『目覚め』て、かつ能力を持つものとなってたワケだ。こうなった状況で俺が感じているのは、やっぱり安堵だった。
(こんな言い方もアレだけど、これで『仲間外れ同士』だな)
戸惑う勇輔を宥めながら、俺はこいつが持つ“力”を詳しく知る為に練習メニューを頭の中で組み立て始めた。
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