パッションルーラー そのⅢ

 さあ、どうするんだ真沙子? 俺は二丁目を出して撃つまでできるが、これが絶好のタイミングなのか?

 真沙子の顔をちらりと見る。その時、ウインクされた。

 今か!

 俺は水鉄砲を懐から取り出すと、撃った。

 だがそれは、保健室の医療器具で防御される。

「もう一丁を…」

 そう耳打ちされた。

もう一丁って言ったって、さっき言われた通りに捨ててしまったじゃないか……。

 そうか、そういうことか!

 俺は捨てた水鉄砲のトリガーを、超能力で押した。

「何を!」

 予想外の行動に、一瞬だけ反応が遅れる妃先生。そして…。

 真沙子が指を、パチンと鳴らした。

 炎が保健室の中で生み出された。

「あなたは自分にかけなさい!」

 俺は水鉄砲を自分に向け、撃ちまくった。炎をガードするためだ。微調整は真沙子がしてくれる。

「ぎゃああああ!」

 捨てた方の水鉄砲には、真沙子に言われた通り、油を仕込んでおいた。この保健室の中で炎が生じれば、確実に引火する。

「よ、よ、よくも…!」

「今よ! 撃ち込みなさい!」

「わかったぜ…!」

 俺は妃先生に向けて、水の球を撃った。

 炎に包まれて、まともな防御はできない。しかも炎を消したいなら、これに当たるしかない!

「ああっ!」

 一撃で炎は消え、妃先生は吹っ飛んだ。

「どうだ?」

 すぐに立ち上がって来られないところを見るに、勝負あったようだ。


「うう…」

 しばらく様子を見ていると、妃先生は目を覚ました。

「どうです、先生。これでもまだ、戦いますか?」

 目覚めるまでに、クラスメイト全員を保健室に集めておいた。俺を含めて十一人の超能力者に睨まれては、戦う気力も出て来ないだろう。

「いいえ」

 先生は首を横に振った。

「私は、触れた者の感情を操る超能力を持っています。ですがある時、これを悪人に利用されてしまったようです」

「と言うと?」

「誰かが私の手を掴み、私自身を叩かせたのです。そのせいで、自分の超能力で、自分を、他人の意思で操っていた状態でした」

 先生が嘘を言っているようには聞こえない。だがそれが本当なら、更なる黒幕が存在するということか…?

「あなたたちには礼を言います。私を救ってくれたのですから」

 妃先生は深く頭を下げた。


「結局、誰が諸悪の根源だったんだ?」

 俺は帰り道で真沙子と話す。

「先生があの状態じゃあ、わからない、わよ」

 だが、どうだっていい。妃先生が我に返ったから、これ以上は島に超能力者が増えることはないだろう。

 もしかしたら、連絡が途絶えたと言って相手の方からこの島にやって来るかもしれない。

 そうしたら、俺たちが全力で迎え撃つ。

 超能力者が世界を支配するだなんて馬鹿げた思想は、俺が水のごとく洗い流してやるさ。

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EXECUTE 杜都醍醐 @moritodaigo1994

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