エレクトロンブラスト そのⅥ

「はあ、あぁ!」

 電気を使って炎が消せても、意識の外からではいくら何でも対応できないだろうからな…。

「な、何? 真沙子、何でお前が…!」

 小豆沢の反応は一瞬遅れた。その一瞬で真沙子は、炎を繰り出してスタンガンを持つ手を包んだ。炎を受けた手は反射で、小豆沢の意思に関係なく動き指を開いた。そして持っていたスタンガンを落とした。

「馬鹿な…!」

 スタンガンと言えど、ボディはプラスチック。真沙子の炎は千度を超えているから、簡単に溶かすことができる。実際にスタンガンは炎に包まれて黒い粘土のように形を変えた。

「真沙子おおおぉ!」

 怒り狂う小豆沢は怒鳴り声をあげながら、ポケットに残った電池を取り出した。

「お前の敵はこっちだろう?」

 俺は水鉄砲を構え、銃口に水を集中させて水の球を作った。今度の大きさはテニスボールぐらい。そして小豆沢が振り向いた瞬間、

「いけえ!」

 発射した。

「うっ!」

 これをまともにくらった小豆沢に風穴が…開かない。水の球には細工が施してあり、当たると同時に弾けるようにしてある。そして小豆沢を見事にずぶ濡れにした。

「今のは海水だ。そしてその様子じゃあ、電池の電気を使った瞬間に、お前の体に電流が走るぜ。ポケットにまだ残してあっても、そっちも全部、濡れちまったしな?」

 小豆沢は、対抗手段を失ったも同然だ。

「この、貴様ぁっ!」

 うるさいな、勝手に吠えてろよ。第二弾を用意すると、今度は大きさを小さくする代わりに細工はなしにして、撃ち込んだ。

「ぐおおおおぉっ……」

 威力を入れたからな。くらった小豆沢は後ろに吹っ飛んだ。

「よし、やったか?」

 それを知るための指標がある。それは、

「やはりか…」

 小豆沢の頭から、白い球体が出現した。

「なによ、これ?」

 真沙子も初めて見るようだ。知らなかったのだから当たり前だが。

「それを逃がすな!」

 俺は走り出した。真沙子も走り出していた。だが努力も空しく、その球体は打ち上げ花火のように天高く上ると、弾けた。俺は真沙子とぶつかっただけに終わった。

「ちくしょう…。あれは何なんだ? それさえわかれば…。クソっ!」

 小豆沢は吹っ飛んだはずみでかすり傷ぐらいは負ったかもしれないが、それ以外は大丈夫だろう。だが、この顛末の記憶はないんだろうな。真沙子の時みたいに。

「ちょっと、粒磨。女子にぶつかっておいて、謝罪も、ないの?」

 俺が小豆沢の様子を確認していると、横で真沙子が言った。

 今回のは真沙子のおかげで勝利できたって感じもするし、感謝の意を表するべきだな。

「ありがとな、真沙子」

 真沙子は一瞬黙ったが、

「謝罪……どこ行った、のよ?」

 と呟いた。

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