マジックフレイム そのⅡ
俺は午前中、八丈島の高校に転校して来た。
「炭比奈粒磨です。よろしくお願いします」
クラスメイトは十人ぽっち。そして俺が案内された席は、真沙子の隣だった。この時の彼女の様子だが、俺が予想しているような感じではなかった。
転校のイメージがあまり思い浮かばないけどさ、真沙子は俺に何の質問も投げつけてこなかった。前の学校での様子ぐらいは聞いてくるものじゃないの? それすら、なし。
真沙子だけではない。クラスメイト全員、挨拶だけでその先がなかった。
おかげで放課後は自分一人で学校を探索した。学校の近辺も歩いたからな、気がついたら日が暮れていた。
それが終わって帰ろうとした時だ。
「待ちなさい」
俺の腕を真沙子が掴んだのだ。
「あなたには、受けてもらう必要があるわ」
「何を?」
俺が聞き返すと、
「あの方の、洗礼を!」
中々物騒な返事だったので、逃げ出した。誰だよ、あの方って。何だよ、洗礼って。
不気味に加えて謎いこともやって来るってなれば、誰だって逃げるしかないだろ! そもそもそんな話は、誰からも聞かされてないんだし!
俺は懐から、一丁の拳銃を取り出した。でもそれは誇張表現で、発射するのは水。
つまりはただの水鉄砲。百均で買える品物だ。
ふざけてるわけではないぞ? 俺は至って真面目だ。
真沙子が炎に特化しているように、俺にも自慢できる超能力がある。
それが、水だ。俺は近くの水を自由自在に操れる。流石にないところから持っては来れないので、今みたいに何かに入れて携帯しておく。パイロキネシスと違って、前準備が面倒ではある。
でもその分、恩恵もデカい。
普通の水鉄砲は、何メートルぐらい届く? 俺の経験で言うなら、安いものでも十メートルは飛ぶ。あとは値段に比例するな。
しかし、だ。俺が意識を集中すれば、この二、三回使えば寿命が来そうなプラスチックの無駄遣いであっても、一キロ離れたコンクリートブロックを撃ち抜ける。焦ってても五百メートルなら精度と威力に自信がある。
それだけじゃない。この銃口から十センチに水を留めることも可能だ。その場合はさながらウォーターカッターのような切れ味を見せてくれる。
水鉄砲だけじゃない。きっと大波だって操れるさ。いつかはな。
今俺が企んでいるのは、あまり大きな怪我を負わせずに真沙子を突破することだ。
水と炎なら、俺の勝ちじゃないかと思うかもしれない。でもそうじゃない。仮にそうなら、こうして逃げる必要がないだろう?
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