ハイカラ

「それで独立したんですか?!」

「そう」

「すごいシンデレラストーリーだ…」

リツとの約束を果たす為、今日は藤木さん家で飲み会。そこでウソみたいな藤木さんの独立話を聞いた。



「なぁに?土方さんのお話?」

さくらさんが、揚げたての唐揚げを持って来た。

「うん、そう。唐揚げうまい!」

「ハイボールおかわり!」

「ハイ!よろこんで!」リツが応える。

「山田くんとリツくんが来たのも、さくらのおかげなんだろ?」

「は、はぁ、そうですね…」やばい。

「俺と藤木を引き合わせたのだって、さくらさんなんだぜ」佐藤さんが言う。

「おい、そこからいくのか?」

「いいじゃないか、この際だ」




俺と藤木とさくらさんは同じ大学だった。

キャンパスでさくらさんを見かけた時に一目惚れしたんだ。いろいろ調べて、彼女の第二外国語がフランス語だと知って俺もそうした。そこで話すようになって、思いきってデートを申し込んだんだ。そしたらokしてくれて。


「でも、その時はもう俺と付き合ってたんだぜ」と口を尖らせて藤木さんが言う。

僕はやっぱり…と言いそうになって、慌てて飲み込んだ。


それからちょくちょく、藤木とさくらさんが一緒にいるところを見かけるようになった。俺はもう、付き合ってるつもりなもんだから、手出すんじゃねぇって最初っからケンカ腰で。


「俺にしてみればそっちが手出すんじゃねぇだよ」また、口を尖らせて藤木さんが言う。


当時の俺はアメフト部で今よりガタイが良かったから、ヒョロッとした藤木なんてワケないと思ってた。ボクサーだって知らなかったんだよ。

一発KOだった。

このヤローって行ったら、さっとかわされてカウンターでモロに食らった。

医務室に担ぎ込まれて、気がついたらさくらさんが手当てをしながら、悪いのは自分だから藤木を許してやってくれってボロボロ泣くんだよ。まいったね…ぐぅの音も出なかった。


「その後、俺はさくらにメチャクチャ怒られたんだよ」

「え、なんでですか?」

「私は何があっても、必ずあなたの元へ戻るから、二度とこんなことしないで!私を信じて!って」

「メチャクチャだなぁ…」

「だろ?でも、すんげぇ怖ぇんだよさくら。だから、ごめんなさいって謝っちゃって」

「え?さくらさんって怖いんですか?」

「うん。怒ると怖いから気をつけて」

「それから二人が入ってるアウトドアサークルに誘われて、そこで今の嫁さんと知り合ったんだ」

「そうなんですか!?なんか、さくらさんっていろんな縁を繋ぐ人なんですね」

僕も彼女出来たし…と言いかけて、ハイボールをぐいっと煽ってごまかした。

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