再会

「は、はははは花さん!?」

「えっ!山田さん!?」


「花さん?知り合いなの?」

「レンタルの時のお客様です」

「えっ、あのランチするって人?」

「そうなの」

どどどどどどどうしてここに!?

うっかり花さんの自宅へ来てしまった…

しかも…社長の奥さんだったなんて…

ど、何処まで知ってるんだろう…

真っ白になった僕に藤木さんが促した。

「まぁ、上がりなよ」

え?なんでそんなサラッと?

こ、殺されるよね?


「うん、これウマイ!」

「さくらさんの料理、ほんとウマイ」

さくらさんって言うんだ…

僕は花さんの料理と本名を知った驚きを噛み締めた。目の前の花さんは、藤木さんの妻であり、子供達の母親であった。

あのプラネタリウムでキスをした花さんは──居なかった。


「山田くん、さくらと何かあったの?」

酔った藤木さんがニヤリと笑いながら僕の心臓を鷲掴みにした。

「いやいやいやいやいや、そそそそそんな……」

「それは何かありましたって答えだね」

「ありません!ありませんよ!」

佐藤さんもニヤニヤしながらとんでもない事を言った。

「また悪い癖が出ちゃったね」

さくらさんが料理を運んで来てくれた。

「何のことかしら?」

ふふっと花さんまで意味深に笑う。

藤木さんが僕の襟首を掴み、鼻先に触れそうなくらい顔を近づけて言った。

「これ以上はダメだからね」

瞳の奥が冷たく光る。

「は、はい……」

ちょっとチビってしまった。



随分飲んだ。二人はホントに酒が強い…僕なんて全然ついていけません。

少し涼みに庭へ出ると、花さんが草木を愛でていた。

「花さん」

「山田さん」

「私のこと、ご存知だったんですか?」

「いえ…知ってたら怖くて来れません」

「内緒にしてくださいね」

人差し指を口に当てて、悪戯っぽく微笑む。

あぁ、変わらず可愛い人だ。

プラネタリウムの花さんが、そこには居た。

「も、もちろんです。元気そうで良かったです」

「山田さんも」

「実は僕、彼女ができました」

「ホントに!おめでとうございます!」

「ありがとうございます。花さんのおかげです。花さんが僕に自信を持たせてくれたから」

「私は何も…」

「体を張って教えてくれました」

「しーっ」

「あ、そうですね…」

「リツさんは元気ですか?」

「はい。あれからずっと海外で…」

「海外?」

「はい、仕事で。しばらく帰らないみたいです」

「リツさんって、何をされてる方なんですか?」

「僕もはっきり分からないんですが、投資でも、お金を出すだけじゃなくて、コンサルとか、ベンチャーキャピタルとか、買収して大きくして売却するとか…そんな感じみたいです」

「やっぱりすごい方なんですね。連絡はされてるんですか?」

「はい、たまに。花さんのこと言ったらビックリするだろうなー」

「ほんとですね」

花さんはふんわりと笑った。



少し風が冷たく

火照った頬に心地よい。

月が綺麗な夜だった。

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