ぐるぐるぐるぐる巡りに巡るお互い青年だった時代
166:自動販売機の前で。
これはあくまで、あとで聞いた話です。
私が彼とつきあいはじめてからだいぶ経った頃合いで、彼の大学のお友達から、聞いた話です(冒頭のほうでキレッキレに彼を評したひとと同一のひとです)。
それは、五月だったといいます。
彼も、そのお友達さんも、互いに大学一年生だったといいます。
大学に入学して、演劇の部活(彼の学校はサークルではなく部といってたらしいです)に入って。なんとなく、互いがどんなもんか、すこしずつですがほんとうのところがわかりはじめるころあい――だったのでしょう、おそらくは。
大学で。部活の途中。
自動販売機へ、飲み物を買いに行ったらしいのです。
彼と、そのお友達さんと、あともうひとりいたって言ってたかな。
そこでなぜだかそういう話になったらしいのです。
ほんとうになんでなんでしょうか。
なんでなのかは、わからないんですけれども……。
冒頭にすこし、彼の大学最初期でのようすを書いたことを覚えてらっしゃいますでしょうか……こう、なにせ、黙って立ち上がっちゃうようなそういう男の子だったみたいですからね。
なにかあるにしろ、ないにしろ、それを言う――というのは、どうだったんだろうか、どういう雰囲気だったんだろうか。……私はその場にもちろん居合わせたわけではないので、想像するしかできませんが、おそらくは、軽いノリの、なんらかふっと湧いて出たような、そんな雑談だったのかなあと想像しています。
「俺さ、好きなひとがいて」
彼は、一種あっさりとそう言ったようです。
いや、そういう言葉であったかどうかはわかりません。
この話はあくまで私がお友達さんから聞いた話を想像して再構成しております。
「えっ、だれ」
みたいに、お友達さんは訊き返したのかもしれません。
で、そんときに、
「高校の先輩」
って答えて、そのままなにごともなかったかのように飲みものをもって、自動販売機から離れていった――というエピソードが、できごとが、……そう、私なんか鬱屈としてそんなん想像もしない超絶自己嫌悪時代に、じっさいに、同時期起こっていたらしいのですよ。
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