152:ぽつぽつ、ぽつぽつ、と雨だれのようにメールを交わしあいながら。
ひとことふたこと、どうでもいいような話をそのままメールで交わした記憶があります。ええ、それこそ、ほんとうにどうでもいいようなことを。雑談でした。あるいは、ありきたりな近況報告とでもいいましょうか。
彼がそのときなにをしていたのかは知りませんが、私はちょうど当時住んでいたところに帰るべく、人の多いターミナル駅で乗り換えをしているところでした。そうです、ほんとうに、雨でした。私は電車を待ちながらケータイをかちかちと打って、見上げれば、曇ったガラス窓の向こうがしっとり梅雨の色に染まっていたのをやはりよく覚えています。
そのあとのメールの内容自体も、ほとんど覚えていないんです。ただ、高校がいっしょだった共通の女の子の話題を出して、こちらから、その子のこととか好きだったりする? みたいな話題をふっと出して、違いますよ、みたいな返事をもらって、内心ちょっと疑っていた私はすこし胸を撫で下ろしたり。
ぽつぽつ、ぽつぽつ、と雨だれのようにメールを交わしあいながら。
私は、いつしか、そのときに住んでいたところに帰っていました。
部屋で、湿った空気のなかいったん身体は落ち着いて、でも心はぜんぜん落ち着かなくて、悩んだ、……悩みました、でもそのときに言わずにはいられないと思った。
それはエゴだし、感情だし、はみ出てるだけだし、どうしようもないと、わかっていたけれど送らずにはいれなかった。
「ほんとうは、後輩くんのことが好きだったのかもしれない」と。
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