151:雨にけぶってね、メールをしたんですよ。
さて。
一年間に会ったのは、そういうわけでほんとうに、結果的にたったの数回なのでした。
ですが、いままでも書いてきたように、ツイッターでは交流がありました。
それにツイッターほどではないですが、メールでも、たまに。
当時はスマホが出はじめたばかりでした。いまでいうガラケー、当時でいう普通の「ケータイ」と、スマホの混在する、いわば過渡期でした。
ある日、私はふと思いました。
あれは梅雨のことでした。それだけはただ、はっきりと覚えています。
彼の最寄り駅をそばを散歩したことや、駅前ツタヤさんに寄ったことの、あれは前だったのでしょうか後だったのでしょうか。
そのことは、雨のけむりにぼやけるみたいに曖昧なのですけど、
ただ、梅雨だったってことならば、いまも強く覚えています。
どうでもいいような遊びの用事で、実家からはるか離れた馴染みも愛着ももてない駅のホームに立って。
雨が、ざあざあ降りではないけれど、ぽつぽつ降るのがやたらとうるさく感じて。
やっぱり後輩くんのことが好きだった、と。
……高校を出たら、こんなに離れてしまうなら。
やっぱ、好きって、言っとけばよかった。なりふり構わず。いや。あのときには、私が自覚できてなかったから、仕方なかったのかな――。
……そっと、携帯電話を取り出しました。
そして、後輩くんのアドレス宛てに、メールしました。
元気――? さすがに最初のひとことくらいは、そういういわゆる常識的な文章で始めたはずなのですけど、しかし、それさえも定かではなく、
でも、メールをしたことならば、やっぱりそれはいまもこんなに鮮やかに覚えている事実で、できごとで――。
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