133:まあ、あとのことはこのときにおいては余談にすぎないわけですが――。

(※前の話の、いちおう注記。

 なにがなんでも小説を一人称で書きたかったのはこの時期だけです。なにせ書いた動機が「せめて追体験したい」ということでしたからね……。そこを脱したいまは三人称で書くのも好きですし、必要なら躊躇なくそうしてます!)



 もうこれは、余談なのですが。

 私はその日家に帰ってすぐ、ルーズリーフに思ったことを書き殴りました。

 私が、私で思う理想を追い求めたので――感情や存在のきっかけはじっさいの後輩のふたりであっても、すぐに違うひと、違う物語たちがうまれ出ました。


 そのあとは、大学に行かずにひきこもりになったこともあり、書いても書いても尽きなくて、私はひたすら「そのふたり」を書き続けました。ええ、それこそ、ひきこもりで友達もあまりできなかった大学生なんて、いくらでも時間がありますからね。



 そして、そのおよそ二年後に。

 私は彼らを書いた長編で、小説の商業デビューを果たしてしまいました。

『天使は、二度泣く。』という一冊です。


 もちろんそこまでいくともう彼らというよりは設定も理想も私のものでしたし、そこから二年間またいろんなひとに影響を受けていたり、編集部のかたにもたくさんアドバイスをいただいていていろいろとおもしろくなるよう変えたので、純粋に彼らに影響を受けたとは言い切れない、複雑なものとなっていました。




 ただ、この日のあきらかな胸のこげつきが「それ」を書く直接的なできごとだったことは、あきらかで。

 だから、デビュー作のあとがきにその「後輩」への謝辞があることは、ずっと、残っていくんでしょうねえ――。

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