110:先輩ぶりたくておごりたかった私と、そのへんまともに遠慮してくれた後輩くんと。
スタバでは、先輩である私がおごるよと言って、いえいえそんなと彼にはものすごい勢いで遠慮されました。
なのですが、あくまでも「大学生の先輩」ぶりたかった私は、なかば無理やりにスタバの甘い飲み物を彼におごりました。
いちおうバイトをはじめたばかりだったので、そういうのも先輩っぽくアピールしたかったのですね。うちの高校は原則バイト禁止だったので、バイトをするというのはイコール大学生、みたいな風潮がありました。
「いやいやこっちはバイトしてるからさー、お金もあってー」みたいに強がりましたが、初給料がほんとにちょびっとお情けのように振り込まれたくらいで、ぜんぜんお金があるわけではありませんでした。でも、「後輩であるところの彼におごる」ということをしたかった私は、そうやって制服姿の彼にスタバをおごって満足でした。
……そういえば、これは余談ですが、彼におごったのは後にも先にもあれが最後だったような気がします。そのあとおごろうとしても、ほんとすさまじい勢いで遠慮されていたような気もします。
そのあと晩ごはんに向かうのですが、移動しながら彼がエスカレーターの上から言ってきたことが忘れられません。
「おごるのはスタバだけにしてくださいね! 晩飯代くらい、ありますから」
「えー、いいよ、おごるつもりだったよ? 高校生呼び出しといてさ」
「晩飯も食べるつもりで来てるんですから問題ないんですよ!」
そんなふうにふたりでわいわいしゃべりながら、私たちは、駅ビルのてっぺんをめがけて移動していきました。
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