109:そうやって無意識のうちに生活を対比してしまっていたのでしょうね。

 スタバでもなにかをしゃべったのだとは思いますが、なにをしゃべったのかはそこまで覚えていません。

 ただ、数ヶ月ぶりの再会でしたし、近況を聴いた記憶はあります。

 ふむふむとうなずきながら、部長としてうまくやってるのだなあ、演劇部にも入った彼女さんとも、学園生活楽しそうだなあ、という印象を抱いたような記憶も、おぼろげにあります。

 自分自身の大学生活についてはほとんどしゃべらなかったような気もしますし、逆にどうでもいいようなことをつるつるとぺらぺらと表面上を無意味になでまわすようにしゃべったような記憶も、あります。

 ただ、自分が違和感を感じはじめていることや、なんとなくキャンパスで孤立しつつあると感じていることは、けっして言いませんでしたし、だからやはり私はごまかしていたのだと思います――後輩くんの前だけでは、キラキラ女子大生でありたかった。

 あのころの。文芸部部長だったころの、女子高生だったころとおなじように。

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