97:彼のいるところからひたすら離れようとするかのように。

 ……まあ、この時期としては、ほんとうに彼とのかかわりはそんなもんでしたね。

 私の気持ちとしては、すでに彼に対して間違えたと思っていて――そしてまるで反比例していくかのように、彼は演劇部でだいじなポジションになり、友達も後輩もいて、頼られて、しっかりしていく。


 おんなじ校舎にいながらもう別のところで生活しはじめた、ような気がしました。

 そして私は、だらだらとゆるく薄いそれでいて時間ばかりは必要な、流動食のごとし受験勉強を、続けました。センター試験直前のある日に私たちのコースの三クラスの先生がたがつくったオリジナルキットカットを渡されて、涙ぐんだときには、自分で自分に安心しました。ああ、ここで涙ぐむ資格がある程度には、私はそれなりに受験勉強をやってきたんだな、って。



 センター試験当日も、一般入試の日程も、覚えていることといえば朝にツイッターで「受験!」みたいにつぶやいていたことくらいです。

 いまでこそ勉強を教える仕事をしているので恥ずかしいのですが、私の受験の結果はけっして褒められたものではありませんでした。


 センター試験当日の点数が、大学生になってから届きました。

 英語はほぼ満点で、200点中198点。国語は漢文で落としまくって七割程度。そして世界史が、信じられないことに、100点中21点。


 私の志望校はどこも有名大学であり、実力が必要なところでした。

 おそらくは悲惨――というかそもそもぼうっとしてろくに勉強できなかった世界史の悪影響で、私は五校ほどの「安全圏」だったはずの大学に、みごと落ちました。

 第一志望校の第一志望学科にも、一次試験で落ちました。

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