Descendant of the bravers

Descendant of the bravers 1話

この世界は、大まかに見れば平和である。細かく比較してしまえばどれだけいるかわからないほどに細分化された人型の種族たちの一部と敵対し、戦争をしていたのも過去の話。国家間の小さないざこざ、牽制を除けば今現在においてこの世界は平和なのだ。

表向きは、の話だが。

次の戦争が起こらないなどと何が確約してくれよう。次に地図から消えてしまうのは自分たちの国ではないと誰が保証してくれよう。自身が一生戦争に加担せずにいたいなど何に願えばよいのだろう。誰も彼もが強力な兵器を求めてしまうのは歪に変わってしまった生存に対する欲求ともいえる物だった。

そして、いくつかの国は同じ結論に至る。


そうだ、先の大戦では”勇者様”がいるではないか。


過去に行われていた戦争の内容は、一つの国家は人間の国家。及びそれに迎合した国たちで作られた連合軍とも称される軍隊だった。対してもう一つの国家は人型だが人に非ざる生物。魔人と称される生命体により構成された国。魔人側に他の魔人の国やその他の国が協力しなかった理由は分かっていないが、結論から言えば戦争は人間の勝利で終わった以上、魔人側に協力しなかったのは正解だったともとれる。

そして、その大戦で勝敗を決めた兵器こそが件の”勇者様”である。

しかしそれは、兵器といえども人であり、勇者といえども生まれた時から勇者というわけではなかった。伝えられるのはどうやら人一倍努力家であったとか、物心がついたときにはすでに戦争が始まっていたから戦争を憎んでいたとか月並みな話ばかりだ。それでも彼はやり遂げた。信頼できる仲間に背を預け、時に殺し、時に救いながら、敵の国家の中枢部全体を人質にすることによって無理やり停戦させたのだ。

そして、戦いが終わり勇者を待ち受けていたのは安寧などではなく新たな命令だった。


種を配るべし。


幸いにも、勇者は男性だった。カエルの子はカエル。であるならば勇者の子は何になりうるかと言えば、勇者だ。ないしはそれに匹敵する潜在能力を持った子供。

たとえ勇者は手に入らなくとも、その子供さえいれば武器にも人質にもなりうる。だからこそ戦いを恐れた人間たちは、国たちは自らの国に勇者が種をつけることを望んだ。勇者の力を一つの国家に独占させないためにも。

そうして、ある国は男性を追いやり、ある国は娘を差し出し、勇者の種をつけさせた。

結果として今現在は4分の1が勇者の血である人々が、勇者の末裔たちが普通の人たちと共に生きながら暮らしている。彼らは、各々が固有の能力を手にしながら今の世を生きる。

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