第33話 引っ越し

 結局、次の日も、そのまた次の日も、

 匡煌さんのマンションへ泊まり。


 やっと実家へ帰ったのは引っ越しの前日。



 新居へのお引っ越しは2月の大安吉日を選び

 行われた。


 昨夜は興奮気味であまり良く眠れなかった。


 何か、小学校の時の遠足や運動会の

 前の日みたいな感じ。


 実家の部屋の軒下にはてるてる坊主が下がっている。


 その効果があってか?

 本日は、雲ひとつない日本晴。


 こうして、実際新居へ引っ越すとなると、

 浮き立つ気持ちを抑えられない。


 匡煌さんが私との時間をもっと多く持ちたいと

 願ってくれた通り、今夜からずっと一緒だ。


 匡煌さんと私、

 それぞれの古い住所から新居となる

 **町のマンションへの、引っ越し荷物の搬入は

 午前中に終わり。


 ランチタイムを挟んで。


 2人で新たに買い足した大型家具がデパートから

 到着するのを待って。


 午後の作業スタート!


 この引っ越しには多くの友が力を貸してくれた。


 和志さん・良守さんら森下組の面々。


 ヒデさんに利沙と真守。


 ヒデさんはすぐ上のお兄さんが運送屋さんで

 プロの人手とトラックも貸してくれた。


 尚、あつしは本日追試の為あえなく不参加。



 プロが手伝ってくれたお陰で作業はスムーズに進み

 午後5時過ぎ、大方のセッティングが完了。


 とりあえず、新生活をスタートさせる態勢は整った。


 利沙が馴染みのお店からすし盛やら

 パーティー用のオードブルやらをケータリングで

 頼んでくれたので、

 皆んなでちょっとしたお疲れ様会。


 皆んなはこの後もそれぞれ用事があるので

 アルコールはなし。



 「おつかれ~」「おやすみ~」


 「ありがとうございましたぁ」

 「気を付けて帰れよ~」


 皆んなを送り出して、

 やっと2人きりになった匡煌さんと私 ――



「―― んじゃ、風呂にすっか?」


「うん、匡煌さんお先にどうぞ」


「何言ってんの? 

 お前も一緒に決まってるじゃん」


「ええっ! そんな、恥ずかしいよ……」


「異議は全て却下。オラ、さっさと来いっ」


「ア~ン、引っ張んないでよぅ……」



*****  *****  *****  



 あの入浴の後は、

 例によって例の如し、東の空が白み始めるまで

 抱かれ……。


 目が覚めたのは、夕方で。

 まくら元に匡煌さんの書いたメモが置かれていた。



 ”ごめん m(__)m 

  ひとつ仕事絡みのパーティーがあったのを

  うっかり忘れていた。

  恐らく今夜は帰れない。

  1人で寂しかったら国枝の家へでも

  行くといい。~ 匡煌 ”



 そっかぁ、仕事じゃ仕方ないけど……

 ちょっと寂しい。


 とりあえず ”何か食べよう”

 重い腰を上げたけど。


 匡煌さんのメモにもあった 

 ”パーティー”というワードで、

 和巴も思い出した。


 カテキョのバイトで受け持ってる

 酒井姫子ちゃんから、とあるレセプションに

 招かれていたんだ。


 まさか、匡煌さんと同じパーティーじゃないよねぇ。

 なんて、お気楽に考えながら帰り支度をまとめ。


 パーティー用のフォーマルドレスに

 着替える為、自宅へ帰った。

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