第31話 デート ②
「ごめんな。嘘つかせて……」
「女に嘘つかせるなんて、まじサイテーだよ」
麻由美が笑う。
「でも、もういい。次を見つける。まさくんも、
ライバルなんて蹴散らして、欲しいもんはさっさと
奪っちまいな」
麻由美が笑いながら立ち上がった。
「じゃ、こんど京大OBと合コン、セットしてね」
「OK」
麻由美が俺に手を振って去っていく。
俺はその後ろ姿を見て、もう1本タバコに
火をつけた。
身もげっそりやつれる程の『本気の恋愛』
真っ最中の親友を見て。
で、麻由美とは『本物の恋』じゃないと思った。
麻由美は……俺との事を『本物の恋』と思っていたん
だろうか……?
俺は、和巴を好きになって……
あ、そういえば和巴は ――?
喫煙所から見える視界に彼女の姿がない!
ついさっきまで居たのに!!
やっべぇぇ! 和巴とデートなのに
元カノと話し込んでしまうなんて、
俺は最低だ!!
急いで喫煙所からトイレへと向かった。
*** *** ***
この顔とルックスだから 『全くモテないよー』
なんて言葉、信じてはいなかったけど。
匡煌さんの元カノ、可愛かったなぁ……
何より、お似合いだと思った。
そして改めて、自分なんか彼からみれば
とんでもない子供だという事に気付かされた。
匡煌さんが私に笑う顔は、誰にでも向けられてる
笑いだったんだ……。
それを私は、自分だけは特別なのかもって、
自惚れていた。
彼女と話す匡煌さんの顔は、私に向けるやさしい
笑顔と同じで優しく笑っていた。
……誰にでもしていたんだ。
なんだか、悔しい……
そんな言葉が思い浮かんでハッとした。
……え? 私、今なんて……
悔しい? どうして?
どうして……そんなこと思うの?
我に返り周囲を見渡すが、
自分が立っている場所がどこなのかさえ分からない
どうしよう……匡煌さんに連絡しなきゃ!
バッグの中を探すが、スマホがない!
あぁ!―― ジャケットのポケットに入れていた。
どうしよう……22才にもなって、
迷子になっちゃった。
けど、この場所からは動かない方が良いと
判断して、私は近くのベンチに座った。
*** *** ***
和巴の姿を探すが、どこにも居ない!
スマホを取り出して彼女に掛けると、
俺が持っている彼女のジャケットから
バイブの反応がある。
和巴のスマホはポケットの中……
俺は大きく息を吐く。
初デートに大失態だ……
取り合えず急いで探さなきゃ!
俺は周囲に目を配りながら、歩き始めた。
ここに座ってから30分が経った。
あの人と、まだ話しているのかな?
私の事、探してくれているのかな?
探してくれているはず……私も探したいけど、
ここから動いてしまったらすれ違いになる
かもしれない。
今日の自分は変だ。
多分、初めてのデートだから浮かれていたんだ。
周りがラブラブの恋人同士ばかりだから、
自分もその気になってしまった。
匡煌さんとは何も考えず、自然体で話が出来て、
笑って……時間が経つのも忘れるくらい楽しくて。
結婚したら、こういう事も出来なくなるし、
当然、彼とも会えなくなる……。
大きく溜息をついた時、私の前に立つ人影に気付いた。
顔を上げると、知らない男性が私を見ていた。
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