第13話 同窓会
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン ――――
講義終了のベルが鳴り渡り。
「じゃ、今日はここまで。各自予習はしっかり
やっておくように」
講師が教室を後にすると、
学生達もざわざわと三々五々、帰り支度を始める。
『おつかれー』と和巴の席までやって来たのは
小学校の時からクラスが一緒だった寺嶌
「行くんだろ? 同窓会」
「えー、行くの??」
「って、行かん気ぃだったんか?」
「だって、**学のレポート今週中に仕上げなきゃ
だし、明日は第2外国語の小テストだし」
「お前は幹事だろ」
「あ、そうでした……」
「しっかりしろよ。会場の準備、俺も手伝ってやる
からさ」
「ふふ、手伝うって言っても、席順決めるスピードくじ
作るくらいだよ」
って、事で、隣の教室で経済史の講義を受けていた
利沙も合流し、3人で同窓会の会場になってる
居酒屋へ向かう。
「―― あの先に見える店だよな?」
「うん ――」
なんだ……駅から案外近いじゃない
そう思った時
ブブブ……メールの着信
【 世良
受信メールを開くと ――、
”和ちゃん達はまだですか?
席……なくなりそうなんやけど ”
……え
だって、まだ30分も前
「―― 早くしないと席なくなっちゃうって、
キヨちゃんが」
「あいつは何にしてもせっかちだからな」
こんなに皆……張り切って来るなんて
思わなかった
ガラ――ッ
『へい、らっしゃい!』
「遅くなり……」
「わあっ!! 和巴! 利沙! 幸作!」
「待ってたんだよっ――!!」
何だろう?
この異様な盛り上がり……気後れしそう。
「さぁさぁ、3人さんはこちらへどうぞぉ~」
やっぱりこういう賑やかな席を仕切っていたのは、
昔から宴会命・飲み会大好き人間の渋谷だった。
このやたら盛り上がった状態に流されて
3人、促されるまま席に座らせられた。
前回から4年ぶりの集まりだ。
全員、22才から23才。
結構責任のあるポストへ就いている人もいる。
と、言っても、大半が店長・マネージャー・主任、
クラスの役職だが。
お酒など入らぬうちから、懐かしい話に華が咲き。
気分はすっかり高校生だ。
もうすぐ7時になろうとするギリギリの時間――。
当時、ほとんどの女子(偏屈な私を除く)が
憧れていた、”理系クラスの王子様=櫻井たつき”が
来た。
彼が現れた途端、ソコだけ時の流れが止まり、
一面ピンク色に染まったように見えた。
来年はいよいよ社会人になると言うのに、
学生時代と全く変わらない凛々しい佇まいと
端正な顔立ち。
今日集まった女子の誰もがそう思ったに違いない。
みんな一瞬言葉を失ったように、ただ ただ
彼を見ていた。
最初の乾杯と共にお待ちかねの祝宴が始まる。
乾杯の後は各々の簡単な挨拶=近況報告。
前回もそうだったが、
男子も女子も地元残留4割、
残り6割は東京の大学へ進学していたり、
海外留学だったりと色々。
乾杯の後はそれぞれの席に座って
隣の人間との会話をしていたが、
30分も過ぎると席なんてあってないようなものに
なっていた。
……私はまだ自分の席に座ったままで
料理にはしをつけていた。
すると、今まで私の隣にいた女子が男子と
入れ替わった。
「……お久しぶり和ちゃん」
「――うん、久しぶりだね世良くん。
さっきはメールありがとう」
ほっこり笑う彼・世良忍は、
お父さんが不慮の事故で急逝するという事さえ
なければ私達70期卒業生の総代になってた男子だ。
そして*年前、いよいよ上京するといった数時間前、
いつも学校帰りに寄り道していたカフェへ
呼び出されて ――。
==== ====
『ボ、ボクと、け、結婚を前提として
付き合って下さいっ』
==== ====
告白された。
18年間の長い人生に於いて初めての告白は、
返事に迷っている余裕なんかない、
性急なものだった。
とにかく彼は急いでいた ――
なんでも、実家へ帰ればすぐにでも許嫁と婚約
させられそうだから、って。
そりゃあ彼だって、散々悩んだのかもしれないけど、
自分が家業を継ぐ為実家へ帰るって間際に
言わなくてもいいじゃん。
結局私は世良くんのとても不安そうに揺らぐ瞳を
チラチラと見ながら、か細い声で
「――ごめんなさい」って、いうのがやっとだった。
「大学の方はどう?」
「うん……まぁ、ぼちぼちとやってる。世良くんは?」
「ボクは相変わらずだよ。おばあちゃんは、家業を継げ
って人を呼びつけた割には物凄く手厳しくてね、
いつもダメ出しされてる」
――ふと 気が付けば
彼の視線は離れた席にいる寺嶌に向けられていて、
寺嶌の方もその視線を真っ向から受け止め、
静かにかち合ったその視線からは好意的なものが
感じられないって言うか、
パチパチと静電気でも起きそうな緊迫感があって……。
「―― 世良くん?」
「……実は、許嫁とはあれから2人でよく話し合って、
結婚を前提とした関係は解消したんだ」
「えっ――」
「だから、ボクの時間はまだ……
あの時のまま止まってる」
――あの時のままって、あれから何年経ったと……
「やっぱりボクだって、失恋の疵そういつまでも
引きずっていくのはイヤだから、仕事に打ち込む事で
キミを忘れようとした。
でも、結局忘れられなかった……ずっと……ずっと、
好きだったから」
世良くん……
「あ、だった、なんてつい過去形で話しちゃったけど、
今でもキミの事が好きだよ」
――すがるような目
冗談……じゃ、ないみたいだね。
「――放っといていいのかー?」
世良からの好戦的な視線を適当に受け流して、
不機嫌そうな表情で水割りのグラスを傾けている
寺嶌に、
そう声をかけてきたのは城西大附属病院小児科
医局長・
高校時代は養護教諭だった。
「何がっすかぁ?」
「とぼけんな。お前ってすぐ顔に出るからごまかし
利かねぇんだよ……ありゃどう見たって姫が
大手建設会社の御曹司に口説かれてるぞ」
「あいつが誰に口説かれようとオレには関係ないっす
から」
「ったく、素直じゃねぇのも相変わらずだな」
そんな西園寺の挑発的な言葉に
いとも容易くのっけられてしまったのは、
寺嶌も今夜はかなり酔っていたんだろう。
寺嶌はスクっと立ち上がると、
私の方へスタスタやって来ていきなり私の腕を掴んで
「帰るぞ」と言って、半ば強引に立ち上がらせた。
「こ、幸作……」
「ちょっ、寺嶌――」
「ごめんな、世良。
こいつの今のアパート門限*時だから」
はぁっ?? 門限? アパート?
私は実家暮らしなんだけど。
呆然としている世良くんを尻目に、
寺嶌は私をグイグイ引っ張ってあっという間に
外へ。
駅へ向かってズンズン歩いて。
駅の改札が見えて来た頃、
やっと寺嶌は歩速を緩めた。
「酒の入る席であんな隙だらけの顔するんじゃ
ねぇよ」
「私が誰に口説かれたって関係ないって
言ってたくせに」
「アレはだな……ちょっとした言葉の綾だろ。
そのくらい理解しろよ」
「大体、彼氏でもないあんたにどうしてそんな事まで
言われなきゃいけないの!?」
「あぁっ?? お前、ケンカ売ってるわけ?」
「はぁっ?」
私らの事を心配した利沙も後を追ってやって来た。
「ちょっとお2人さん。もうそれ位で止めときなよ」
「……」「……」
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