第3話 私の恋愛偏差値ゼロの苦悩

−−−『やっと会えたね、凛くん!』


 胸まである金色のウエーブがかった髪の毛の彼女が、大きな水色の眼を細めながら、嬉しそうな笑顔で言った。

 「可愛すぎて鼻血出そう!ハァハァ。」

 可愛さに興奮しながら、その彼女を眺めながらニヤケていた。

 

 しかし、その直後、その彼女は不機嫌となった。



(どうしよう、どうしよう・・・)


 その彼女とは、萌え恋愛シミュレーションゲーム【あなたと萌えたいのっ!】の中の推しメン『カレンちゃん』。

 私はカレンちゃんを恋人にする為に、日々、選択肢を選んでゲームを進めている訳だが、恋愛したことがない・好きな人ができたことがない私にとって、彼女を恋人にするのは、至難の技だった。

 そんな今現在、史上最強の窮地に陥っている。

 大好きなカレンちゃんが怒っているのだ。画面の中のカレンちゃんに『プンプン!』という文字と怒りマークが出ている。


−−−『え〜。そんなのいらないし・・・。センスないよね、凛くん。』−−−


 今日はカレンちゃん誕生日で、生誕祭イベントをやっていた。最愛の彼女の好みのプレゼントを渡すのだが、肝心な選択肢を間違えてしまったようだ。


 彼女の欲しがっていたプレゼントとは全く違うプレゼントを渡してしまったことにより、先ほどの可愛い顔とは一変し、見下した顔で冷たい言葉を言い放たれた。


「ギャー!!ど、どうしよ、カレンちゃんが、カレンちゃんが・・・。

 終わった、嫌われた・・・。」


 残念ながら私は間違ったプレゼントを渡してしまったようだ。

 せっかくの生誕祭イベントで、そのイベントを成功すると、好感度が上がりやすいから、カレンちゃんと恋人になるチャンスだったのに。好感度が58%から27%に下がってしまった。


「……私、嫌われちゃったよー。どうしよ……(泣)」


 黒縁メガネの中の大きな瞳がうるうるとしてきた。もう少しで涙が落ちそうな時、ハッと気づいた。


 −−−あ、まだ今日のプレイしたところ、セーブしていない!!!


「おーー!神様が私の味方になってくれたんだーーー。」



 なんとかしなきゃ!!


 奏太(そうた)に話したらバカにされそうだし、これは昔からオタクの広臣(ひろおみ)に聞くしかない。


 広臣の部屋へ行こう!


 広臣の部屋は、2階にある凛の部屋と隣接しており、昔からそれぞれ窓から行き来していた。

 中学生になってからは、なんとなく、少しずつ行き来しなくなっていて、ここ数年は行っていなかった。


 今は緊急かつ、重要事項だから、久しぶりに急に行っても別に怒らないよね。

 よし、考えるより行動!


−−−いざ!出動!!


 ベッドの上にある自分の部屋の窓を開け、向かいの目の前にある窓に手を掛けた。

 鍵がかかっていなかったようで、横にスライドさせると、ガラガラと音を立てて、窓が開いた。

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