妹の独白
三行くらいでわかる前回の神薙
”先祖返り”とは、血の繋がっている祖先達の記憶を追体験するというもの。
○
その昔。ずっと私はくらいところにいた。
私が私であることに気付いた時には既に、セカイは暗闇で満ちていた。
私の、観測と記憶の機能がよくよく稼働し始めても、そもそも私はなんなのかなんて知れる環境ではなかった。
定期的に蔵の扉が開き、明るい方から
間延びした時間の中で、私はただ漂っていた。
今だから分かるが、いわゆる〝 監禁〟ということになるのだけれど、当時はそれが当然のことで、なんとも思わなかった。蔵を出るその時まで、寂しくて悲しいことだったなんて知らなかった。
逆に言えば、ずっと蔵の中で人として死んだままだったのなら、蔵で過ごした期間は正当化されて、私に影を落とすことなんてなかっただろう。
……今も、暗くて狭い場所は、大の苦手だ。
もちろん、蔵の外へ連れ出してくれたお兄ちゃんには感謝している。
一生分の命じゃお礼できないくらい――死んでも死にきれないくらいに。
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