ふぁみれす 一杯目
三行くらいでわかる前回の神薙
凪の下駄箱に手紙が入っていた。”ラブレターか?”と、うろたえた凪だったが、ラブレターなかった。
君影がアパートにやって来た。
○
立ち話も何なので、俺達は高校の隣にあるファミレスに行った。
深夜帯だから、青少年育成なんちゃら法に引っかかりそうな気がしたのだが、問題なく入店できた。
席につくと、二杯の水入りグラスが運ばれてきた。
「ええと……
「君影でいい。昔のお前はそう呼んでいた」
「お兄ちゃんね、記憶ないの」
「いつから」
その質問には俺が答えた。
「小学低学年以前の記憶はない……」
敬語を使うべきか、それともタメ口でいいのか……イマイチ分からない。
「あー……、そうか……」
「もしや、親族の方ですか」
「一応高祖母ではある……」
「こうっ……!?」
ひいっ、ひい……?
「あれ私、お兄ちゃんに言ってなかったっけ?」
「聞いていない。……なんで高祖母がそんなにピンピンなんですか? 見た目も……」
「私の存在か……そうだな……。 ――二体の蛇が、互いに相手の尾から飲み込んでいったら、どうなると思う?」
「始まりも終わりも、分からなくなる……とでも言うのか」
「ご名答! そう、術で絡ませた二体の蛇を私の体に組み込んでみたら、死ねなくなったんだ。もっとも不死身の体は副産物で、最初はこうなるとは思っていなかった……。昔、そこらの蛇と戯れていたとき、蛇穴の使役式の二体を体にぶち込んだら楽しそうだなと思い、趣味ついでにやってみたら、思いの外うまくいってしまったんだ。まぁ、そんなところだ。ああ、蛇の名は
「諾と乍……」
「今日来た理由の一つなんだが……私は、諾と乍を凪に譲渡したいと思っている。今現在、こいつらの飼い主は
「分かりま……分かった。それで親父は、今どこで何を……?」
「それ聞くか? 凪が殺したんだろ。だから、」
「あ〜〜〜!? え、ちょっと待って! それは内緒にしてたのに!」
梵は手をブンブンと振って、君影の話を遮った。
「事実だろう。隠す理由あるか?」
「あるよ! ありありだってば! 凪が気に病んじゃうからだよ……。お兄ちゃん、なんだかいつの間にか、繊細になっていたんだもん……」
「アイツぶっ殺した翌日には、ケロッと小学校行ってたものだから……すまん」
「…………どう反応していいのか」
分からない。
「なに、気に病むことは無い。榮一は犬畜生にも劣っていたのだから、人として数えなくていい。ノーカンノーカン……」
君影はフォローをしてくれているのだろうが、どんなに親父が屑であろうと、殺しはいけないことで――と俺はスパイラルマイナス思考に入り始めていた。
「…………ん? あれでも、親父の手に諾と乍を渡らせたくないのは分かったが、そもそも親父は殺されたんじゃ……?」
俺が殺したらしいのに、まだ存在しているとでも言うような……。
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