第7話 脱出ルート

「輝月達を助けに行こうぜ!」


屈託のない笑顔で言われるが出来るはずがない

事実上の宣戦布告をしてる国際宇宙連合と違って日本こちらは戦争するつもりも、巻き込まれるつもりも無い

スクルドを保護してるのは技術が欲しいだけだ、善意も無くは無いが、打算ありで保護している

状況次第だがリスクがリターンを上回ったら中国に身柄を受け渡すことも考えられる


「そんなことは出来ない……」


俺は意識していないが、苦渋に満ちた顔をしていたのだろう


「おう、知ってるぞ。

言ってみただけだって、だから…、その、ごめんな!」


何故か謝られてしまった


「助けに行けないが、日本に戻ってから連絡を取るといい。

逆に言うと、日本に戻るまで位置情報送ったり、連絡を取るのは禁止だ」


司令おやじが変になった空気を壊すように発言する


「あー、わかってるよー。

俺が特定されるような行動はダメってんだろ?

匿ってもらってるんだ、それぐらい守るぜ」


「それは助かる、それでだ。


私としては西域地域から陸路で出ることを提案する。

理由としては隕石衝突の衝撃で、空気中に大量の砂が舞っている


戦車4両を乗せられる超大型輸送機だが、とても貴重だ

その分とても慎重に運用する必要があり万が一のことも許されない


連絡を取って超大型輸送機を手配していたが、エンジンに砂が入ることを嫌って

別の空軍基地を使う用に言われた

だけど中国政府の許可が降りず、近場の空軍基地は使用不可


これは恐らく、隕石を落とした報復行為のために準備してるからだと思う

補給路も確保してるだろうし、情報を漏らしたくないから戦争が終わるまで許可が出ない可能性が高い

このままここで無駄飯食らいしてるぐらいなら海まで陸路で移動したほうが早いと思うがどうだろう?」


「陸路で移動するとしたら国境を越えてインド洋に移動するのでしょうか?」


質問したのは【ロプノール】の副艦長だった近藤副指令


「そうだ、日本うちと良好な関係にあるインドなら通行許可を貰えるだろう」


「途中にある山脈はどうするのですか?」


「中国とインドの国境がある山脈の一つにカメット山と言う山があるんだが、その山の西側にインドの国道が走ってる。

中国側の道は荒いが走れないことはないだろう。」


地図で場所を確認すると、ここから南下した所に確かに通れそうな道があったが、その道中が問題だ

ホータン地区ホータン市にあるこの空軍基地から最短距離でいくとなると二つの山脈が道を阻む

最初に言ってた国境沿いの山脈の他にも、もう一つ山脈があり

そこを超えるには紛争地域を通るか大きく遠回りする必要がある


紛争地域を通るぐらいなら遠回りすればいいと思うかもしれないが中国はとても広い

遠回りする距離が東京-福岡間の往復距離ぐらいあれば躊躇もする


「そこを通るぐらいならチョモ・ユンモ山あたりの道でいいのではないでしょうか?」


副指令が提案したルートはネパール、ブータン、バングラデシュ、とインドから独立した国が密集するルートだ

当然、そこを他国の軍隊が通れば国際問題になりかねないので却下される


「別に急がないから安全なルートで行こうぜ!」


安全なルートで言えば、空路より陸路なので、紛争地域などを避ける司令が提案したルートで行くことになった

まずは本国に帰るルートを伝え

次に、中国とインド両政府に連絡を取り通行許可と通行のために必要な物資を融通してもらうように話を付ける


そうしてやっと帰る段取りができたが、中国とインドの両政府から条件が出されてしまう


中国の条件は国内を他国の軍が動き回るのは歓迎できない

しかし、用も無く国内に他国の軍がいる現状も看過し難い

現状、300名ぐらいの人数なら許容できるが、情勢悪化に伴い貴君らが帰れない状況に居ることは理解している

従って指定するルートを通る際に民衆を驚かせないよう見た目を偽装をすること

以上の条件を守る限り、物資の支援をおこなうことを約束する


という内容が帰ってきた

インドの条件はというと


日本の派遣団の状況は理解した

我々も協力はやぶさかではないが、指定する時間に指定したルートを偽装して通ってほしい

その際、不逞の輩に襲われた場合は自由に迎撃し捕縛して構わない


という内容だった


「中国の方は分かんだけど、インドの方は山賊か何かが出るルートってこと?」



「そうだ、インドの方もただで通すより治安維持に役立ちそうな場所を選んでるってことだ」


一回通っただけで、うまく山賊に遭遇するとは思えない

それでも何か一波乱ありそうな内容だった

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