第6話 戦争準備

オペレーション・メテオの着陸地点にある旧軍事施設は、護衛ロボットに占拠されていた


私がチャン大佐から聞いた報告では、中国第3軍区陸軍との戦闘で8体確認され、6体を撃破

その後、2体復活して【ロプノールⅡ】を乗っ取られたが、甚大な被害を出して撃破し一時撤退している

(周りには敗北と取られてたがチャン大佐は一時撤退と言い張っていた)


砂漠の悪魔と言われるようになった護衛ロボットは、私達を発見しても攻撃することは無く旧軍事施設に迎え入れてくれた

彼等は口が無いので喋ることはないが、身振り手振りで意思疎通はできる

私の絶対命令権も有効のようで、ワルキューレのメンバーより私のことを優先して聞く

だけど………


「最初は9体だったはずなのに何で46体に増えてるの!?」


そう、何故か護衛ロボットは数が増えていた


「恐らく、コアの分頭数を増やせたのだろう」


何でもアーニャが言うには、護衛ロボットは頭、体、両手、両足に核と言うべきコアが入ってると言う

メインは体の心臓にあるが他の部分でも切り離して一個のコアだけで護衛ロボットは動く

ただ、動きが鈍くなるのでサポート兼予備のコアとして搭載されてるのだとか


「その予備コアで起動したのがコレってこと?」


「そうなるな、しかしそれでも数が足りん」


降下して増えた34機も入れても80機

中国に宣戦布告とも取れる隕石落としを敢行かんこうした


それなのに戦争する人数が用意できない

ロボットで代用するとしても、まともに動くのは80機

予備コアで増やしても284機が限界だ


「どうしようか?

どこかに援軍でも頼む?」


「…………頼んでも間に合わない」


ガブリエルの言う通り、援軍は呼べても来る間にやられる可能性が高い

私達が最初にすることは時間稼ぎだ

ロボットを生産する時間、他国に話をする時間、地上の状況を把握する時間

時間があればどうにか出来る


「まずは、時間稼ぎだね」


「賛成だ、時間があれば状況を整えられる」


「幸いにも、旧軍事施設ここには前の人が残した保存食が大量にあります」


「………水は?」


旧軍事施設は地下にあるようで保存食は一万人が一か月は持つ量が残っていた

水も生活用水に飲み水が残ってるが、こちらは一万人が一週間持つ分しか無い

製鉄など金属を作る場合は綺麗な水が必要だ

生活する分には問題ないが、生産に使用する量と考えると少ない


「生産に使う分を含めると不安が残る量ですよね。どうしましょうか?」


そんなの決まってるじゃないか


「汚水でもろ過すれば使える」


詳細は省くがトイレに行く時に出る水もろ過して使うと言う意味である


「えっと、臭いはどうするの?」


「我慢すればいい」


「…………衛生環境が悪いと病気になる」


「還気すれば大丈夫でしょ」


外は砂漠だから暑くなると言う意見は無視する

そもそも金属を加工する場所は基本的に暑い

砂漠の熱が還気で入って来ても問題ないだろう


「じゃぁ、水はろ過して使うってことでいいわ。

それで時間稼ぎのことなんだけど良いこと思いついたの」


そう提案してくるのはエイルだ


「私達が死ぬようなことになったら、先生に隕石を落とすって宣言して貰えればいいと思うの!」


殺すより捕獲する方が難しい

中国と私達の戦力差を考えると、戦争と言う規模の戦いにはならず、一方的な蹂躙になる

前の護衛ロボットの戦いは、初見殺し(ロボットの死んだ振り)が綺麗にハマっただけで偶然の勝利でしかない


相手は一度負けたことで油断は無い

その上で規模が、護衛ロボットを含めた私達の100倍近い数が来ると予想されている


その戦力差で、さらに隕石で脅されたなら捕獲しに来るだろう

それなら何とか時間稼ぎが出来るか?


「悪くない手だと思う。

少なくとも、やっておいて損は無い」


まず最初に賛成したのはアーニャ


「…………いいと思う」


次にガブリエルが賛成して、賛成多数で決まる


「わかった、まずは父さんに連絡しないと…」


そこで気付いた

私の鋼鉄鎧メタルアーマーは上半身が無くなっていて連絡が出来ない

私以外の4人なら連絡できるが、はぐれたスクルドが父さんに連絡して行方を知ってるかもしれない


「なんで気づかなかったんだろ?」


そのことを皆に伝えると


「意外と視野が狭くなってたんだな」

とアーニャが言い


「すっかり忘れてました」

とエイルが呑気に言う


「…………気づいてたけど、現状の話し合いの方が優先」

とガブリエルが発言する


さっそく、外に出て連絡を取りつつ、次いでに索敵をする

周囲は三百六十度全て砂漠なので、カメラ越しに周囲を見るだけで敵が来るか分かる


「さっそく連絡を取ってみましょう」


連絡を取るのはエイルで通信は輝月を除く全員が受信できるようになっている


そこで告げられたのは意外にもスクルドの消息は不明とのこと

なんでも隕石が巻き上げた砂でレーザー通信出来ない地域に居るということしか解っていない


「そうですか、それなら中国軍の動きは分かりますか?」


中国政府は隕石の被害があったホータン地区ケリア県に災害派遣してる

被害状況が分かり次第、伝えるが宇宙そらからでは詳細は分からないと言われた


「とりあえず、中国に脅しをかける件は了承した。

時間がどの程度稼げるか分からんが、いきなり殺しに来ることは無いだろ」


その日の連絡はそれで終わった

その後、数日たってから軍を編成して旧軍事施設ここに進行し包囲した


思ったより準備ができなかった私達はどう逃げるか相談してたのだけど、そこで意外な戦術を使われることになる


それは「兵糧攻め」だ


私達を捕獲するには良い作戦だと思うけど、食料が無いことが前提だよね?

ここには前の使用者が残した保存食が大量にあって意味が無い

このことから彼等は情報が著しく不足してることが挙げられた

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