第3話 ゼブラ模様?

その日、オペレーション・ワルキューレで落ちてきた隕石が地上スレスレで大爆発を起こす

ホータン地区ケリア県の北部にある基地を中心として、半径100km程の地域が隕石の破片による直接の被害を受ける

爆発と共に舞い上がる砂塵が偏西風の影響を受け、南西よりの半径200kmほどが暗闇に包まれた


この時の影響か、次の年は日本が記録的な冷夏になり食料品が不足気味になる


当時、俺はホータン空軍基地の借りていた敷地内で、試作型鋼鉄鎧メタルアーマー泰山に搭乗し

戦車を壁にして衝撃に備えていた

隕石は光を纏って空から落ちてくる

迎撃のミサイルがキノコ雲を作るほどの大爆発したのは驚いたが、数秒遅れて衝撃波が来るのはもっと驚いた

離れてるからか衝撃波は大したことは無かったが、迎撃ミサイルの威力としては

異常な威力


この破壊力を出せる兵器は一つしか知らない

核兵器、旧時代の遺物となっている核爆弾を迎撃ミサイルに乗せて使ったらしい


それでも隕石は迎撃できず、地上にぶつかる前に大爆発する

俺はこの事態を記録するために危険な外に出てたのだが、この後に襲ってくる衝撃波と少し遅れてくる砂塵に飲まれることに


「ライトON」


辺りはすっかり夜の暗さになった

ガラスが割れた音がしていたので屋内の様子を見ようと起き上がると、空から鋼鉄鎧メタルアーマーがパラシュートで降下してくるのが見える



呟いてしまったのも仕方ないだろう

輝月のあの時と被ることが何個かある


今の俺は武器を持っていない

ただ、衝撃などに備えるために鋼鉄鎧メタルアーマーに搭乗してたのだ

敵が居ないのに武器を持つ訳が無い


俺と空の鋼鉄鎧メタルアーマー以外に人は居ない

外は危険だと分かっているのに態々わざわざ出るのは映像を撮影してた俺ぐらいだろう


最後に空の鋼鉄鎧メタルアーマーが輝月の赤い鋼鉄鎧レッドアーマーと同じぐらい派手な見た目をしている


「ゼブラ模様とか趣味悪いな…」


「ゼブラじゃねー!!

虎だよ、白虎びゃっこだよ、知ってるだろ?

中国にちなんで四神の白虎びゃっこ

ここは西域だし、西を守る白虎びゃっこは縁起物だろ?

シマウマなんかと間違えるんじゃねー!!」


俺の声が聞こえたらしく、日本語で激しいツッコミが来た


「いや、白虎びゃっこにしては黒すぎだろ?

白虎びゃっこじゃないが、ホワイトタイガーも名前通り、白い虎だぞ。

もっと黒い模様を少なくしないとダメだろ?」


「そうか~?

エイル姉ちゃんが大丈夫って言ってたんだけどなー。

やっぱりズレてるか~。」


エイルと言ったのをハッキリ聞き取る

やっぱり輝月と同じ、国際宇宙連合軍属の鋼鉄鎧メタルアーマーパイロットだろう


「ゼブラ《それ》はいいとして、エイルって言ったよな?

それはエイル・ストゥルルソンのことか?」


「そうだよ。

もしかして私のこと気付かなかった?」


気付くも何も初対面だろ!!


「気付くも何も初対面だろ!!」


思ったことがそのまま出てしまった

ゆっくり降下してきた、ゼブラ模様の鋼鉄鎧メタルアーマーが着地する

そのまま軽口は止めずにパラシュートの回収を始めた


「そういえば、そうだった。

ビーコンと映像で私は分かってたけど、そっちは知らないんだったね。

ごめん、ごめん」


「まて、ビーコンって何だ!?」


「目印代わりに、その機体を空から監視してたんだよ。

合流するなら話が通じそうな日本軍がいいと思ったからさ、はぐれた時にこっちに来ることにしたんだ。」


何でもないように言うが、結構とんでもないことだ

彼女は気づいていないのだろうか?


ここは中国の空軍基地で、彼女は敵になってる


「勿論、気づいてるよ。

だから最初から日本語で話してたんだよ。

日本語なら聞かれても直ぐには分からないと思うからね。

後は、神谷お兄さんの誤魔化し次第かな?」


そこで彼女の鋼鉄鎧メタルアーマーが、ゼブラ模様から俺の鋼鉄鎧メタルアーマーをマネしたように紅白カラーに変化していく


「!?」


光学迷彩だ

どんな場所でも周りの風景に合わせて色を変えることで簡単に隠れられる光学兵器だけど、コストや雨対策などで未だに実践で可能なレベルに仕上がってない

それでも木を隠すなら森と同じ考えで、泰山と同じカラーに変化すればここにあることに違和感は無くなった


「驚いた?

今度は隠れることも想定して外装を変化できるようにしてるの。

もっとも、ホータン空軍基地ここに来れた時点で目標の半分は達してるから、後は中国の目を誤魔化せればいいだけ。

協力してくれるよね?」


輝月といい、この子といい、妙な縁を感じる

一度は保護しといて、見捨てた形になる輝月のことを思えば協力すべきなのだろう

個人のことは置いといて、軍の少佐として考えてみても、やはり協力して向こうの技術を教えて貰ったほうがいい


何より、輝月のことが好きな俺は、可能な限り彼女に関わる全ての人を守るべきだと思う


俺の意思は決まった

後は聞くべきことを聞くだけだ


「わかった、可能な限り協力しよう。

だけど、その前に聞きたいことがある」


「何?」


「君の名前を教えてくれ」


そこで、動かしてた手を止めてこちらに振り向いた


「そうだ、忘れてた。

私の名前は、スクルド・ノルダル、よろしくね!」

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