第30話 買い物

昨日から買い物に行くのは決まってた


服や下着の替えが無い私には新しい物が必要だった

そのために普通の服を借りたし、似合うように着合わせた


それが


「少佐は午後から、奈菜伍長と輝月ちゃんの護衛について貰う」


と言われて絶望した


これはデートと言うやつだろうか?

宇宙そらに居た頃は行ける場所が限られてたので引きこもりでは無いが近い状態だ

初めての場所に異性と一緒に買い物に行くのは難易度が高い


しかも少佐は私のことを慕ってる

今後、いい関係を築くためにも満足は無理でも幻滅させないようにしなければ!


宇宙そらならいい場所と時間を知ってるんだけどなー………。


午後から買い物に行くことに変更され、私は今変装(?)の為に髪を黒く染めてる

ホータン市は多数の民族が暮らしており、特にウイグル族が白人に近い見た目をしてるので混ざっても違和感はない

違和感はないが、ウイグル族は髪が黒か茶髪なので私も目立たないよう染めてるわけです


「ごめんね、綺麗な銀髪だけど染めないと目立って危険だからね。」


洗面所で塗り忘れが無いように奈菜伍長に手伝ってもらってる


「染めても顔の造形は変わらないから目立つ気がするけど、大丈夫なの?」


「喋らなければ大丈夫ですよ」


どういう意味だ!

喋ると残念になる美人は実際にいるらしいが、私がソレだと言うのか!!


私の見た目はウイグル族に近い感じになっているので目立つことは無い

だけど実際にはウイグル語を喋れないので、バレると言う意味なのだけど、私はその様に勘違いしてしまった


昼食は【ロプノール】で食べて、その間に設定を確認する


「私が輝月ちゃんの姉で、少佐が旦那様ですか……」


見た目から考えて無理のない設定なのだが


「伍長が俺の奥さんか……。」


「私がウイグルと日本人のハーフで父がウイグル。

父の故郷を見るために観光で来てる……」


三人が三人とも不満な設定だった


「少佐、その態度は失礼じゃないですか?」


奈菜伍長の怒りも尤もだ


「いや、俺が好きなのは輝月だからな」


この人は私の何が好きなんだろう?

一目惚れと聞いたが、実際に話して幻滅したりしないのだろうか?


「少佐はロリコンなんですね」


ニッコリと笑う奈菜伍長


「断じて違う!!

一目惚れした女性が少し幼かっただけだ!」


「何が違うんでしょうか?」


などと奈菜伍長が少佐をからかっていた

このやり取りを見てるかぎり、夫婦の設定でも違和感ないが本人達は不満らしい


やっぱり私に恋や愛は理解できない



◇ ◇ ◇



昼食を食べ終え、建物までジープの中に隠れてホータン地区ホータン市に入った

建物はデパートのようで、ここは駐車場になる


「奈菜、ホータン市のことは知ってるよな?」


ユルンカシュ川とカラカシュ川に挟まれたオアシス都市で、ホータン市は日本語で市と呼ぶが、実際の大きさは日本で言う県並に大きい(県級市と言う)

ここは昔はホータン王国と言う国があり、遺跡があるが整備されていないので、観光地としては栄えてない


「観光客ですから、これぐらいしか知りませんねー」


「何もなかったり、殆ど砂漠だったりでラワク寺廟遺跡ぐらいしか良いの無さそうでしたね」


「それなら知ってれば大丈夫だな、今回は観光じゃなく買い物だから行かないけどな」


さっそくデパートの婦人服売り場へ


「………」


町の様子から予想は出来ましたが、ウイグルの民族衣装やイスラム教の服などが多く、普通の服が少ない


「これなんか良いんじゃないか?」


神谷に勧められたのは赤い踊り子衣装に金色の装飾が施された物


「良い服ですが、本気で言ってるならセンスを疑います」


買いに来たのは普段着だ

ドレスのようにも見える踊り子の服なんて着れない

少し、しょんぼりしてるので言い過ぎたかもしれないがあれは恥ずかしい


全体的に柄物が多く、否、イスラムの服以外は全て柄物で、シンプルな服が好きな私には良い服選びが大変だ


「シンプルなのが良いなら、この辺の服はどうだ?」


次に勧められたのはイスラム教の人達が着るような服


「別にイスラム教って顔隠さなくていいし、輝月ぐらいの歳なら隠さなくていいんだぞ」


イスラム教で女性が顔を隠すは大人になってからだ

子供は隠さなくていいらしいが、私だと許されるか微妙なライン


「それとも隠した方が都合がいいか?」


それは分るが失礼なことを言ってるのでイラっとする


その後、1時間ぐらいかけて買ったのは、コート風の薄い上着に、スカートが短いシスター服っぽい物、セクシーなスリットが入ったシスター服風な物

それに合わせたズボン数着などを数点買い

ついでにニカブと言う顔を覆うベールにスーツ


それに最初に勧められた踊り子の服も買った


踊り子の服それ結局買ったんですね」


「セットのベールが無ければドレスで通用しそうだし、無いとは思うけど着なきゃいけない場合があるかもしれないから」


「うんうん、そういう機会があると思うのは自由ですからねー」


お会計は自分がすると言って聞かない神谷が払う


このまま【ロプノール】に戻るだけなのだが、それは勿体ないということで少し観光がてら見て回り、特に何事も無く、夕方頃に【ロプノール】に戻る


戻った私達を待っていたのは撤退してきた中国軍と、

それを率いるチャン大佐が待ち構えていた

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