第24話 オシャレ
午前中、私はタブレットの情報を紙にまとめていた
紙に書いてるのは、後で行う月基地に通信して情報を送るためで、ガイドブックの情報をそのまま写してる
「なんで私が写してなきゃならないんですか!?」
写してるのは私ではなく奈菜伍長が写してる
「暇ならいいでしょ?」
データをそのまま通信に使えればよかったけど、これも規格が合わず手で書いて
紙に書いた文字は読み込めるので写してたのだけど、思ったより疲労して長く続かず、奈菜伍長に写してもらうことになった
これは低重力障害と呼ばれる筋力の低下で、予防の為に筋トレしても必ず起きる
私のはさらに酷い低重力体質で筋力自体少ないし質も悪い
これでも月では鍛えに鍛えたのだけど地球では一般人程度の筋力を維持出来てればいいと言われてた
今回は筋トレで使わない筋肉を使い、疲労となって出た結果だろう
手を広げると少し震える
これは明日も筋肉痛になりそう
「低重力障害かー、もしかしてペンより重い物を持ったことのないお嬢様育ちだったりします?」
「そんなことは無いけど、ペンと体の重さが6倍になってたら疲れると思わない?」
月の重力が地球の6分の1だから、月から地球に来た時は逆に6倍の重力になる
「ペンが6倍は分かるけど、体の重さが6倍になるのは感覚としても分からないよ」
「とにかく疲労しやすい状態って考えて貰えばいいよ」
それ以外にも骨が脆くなってたり、臓器の能力低下などがある
「他には………」
そのまま他愛もない会話をしていると奈菜伍長のインカムが振動する
「はい、もしもし、………はい、………………はい、了解しました。 今向かいます」
「どうしたの?」
「撤退作業の再開です。 私は呼ばれたのでそちらに向かいます。
注意だけして奈菜伍長は出ていく
一人になったので奈菜伍長がやってくれたガイドブックの写しを切りのいいところまで進めようと思ったが、意外に早く作業してた様で全部写し終えてた
「これなら送るデータを書く必要ないかも」
次サボりに来たら扱き使うことにしよう
私は向かう町の情報を頭に叩き込んで、あとはゲームをして昼食まで過ごした
昼食はどうするのかと思ってると奈菜伍長が持ってきてくれる
私の昼食は低重力障害を考えてお粥風のリゾットだ
「私が調理担当に言って作ってもらったお腹にやさしいリゾットです。
感謝して食べるといいですよ」
ドヤ顔で言われるが不思議とムカつかない
「ありがとう」
と言うと照れながらも満面の笑みを浮かべる
演じてるっぽいけど何となく憎めない人だな
食事をしたあとは町に移動するだけらしい
食器を戻したあと、いくつかの私服を持って奈菜伍長が戻ってきた
「輝月ちゃんと同じサイズの女性隊員から私服を借りてきました!」
町に入るためには軍服では目立つので私服に着替える必要がある
私が最初から着てた服でもいいと思ったが、それではダメと
「私達は余所者ですから普通にしてても目立ちます。
派遣先には女性だけだと襲われるところもあるので武器を隠し持つこともあります。
それでも襲われる時は襲われるので防弾チョッキも着ます。
それを隠すために上から服を着るの!」
つまり防弾チョッキが見えない様な服を上から着る必要があるらしい
砂漠なので暑くならないようにしないといけないのが難しい
「このワンピースなんてどうでしょう?」
「砂漠で肌をさらすのは止めよう。
肌を焼いて体力を消費させるらしいよ」
「そう言われてみれば肌晒してる人いなかったわ」
ここに来た時に現地人の恰好を見て知ってたのだけど、隕石が落ちたことで忘れてたらしい
「長袖のワンピースはある?」
「あるけど、それならコレとコレを組み合わせるのもいいんじゃない?」
などと相談し明日着る服が決まる
スカートが短いワンピースにズボンを着て、上にも長袖の薄い服を着ることで日差しの対策する
「意外とオシャレにまとめましたね。
うん、いいと思います!」
これで明日着る服も決まったし、そろそろ月と連絡を取らないと
「それはいいですが、ロプノールが止まってからでいいんじゃない?」
確かに止まっていたほうが通信しやすいけど大した差はない
奈菜伍長に了承してもらって格納庫に向かうと全ての物が固定されてた
「移動中ですから固定されてて当然ですね」
【ロプノール】はそんなに揺れてないのだけど急停止した時の事故を防ぐ目的で、動く物は固定するよう義務づけられてる
当然、私の
「どうします、固定してるのを外してヘリポートまで向かいますか?」
「やめよう、さすがにこの状態でヘリポートまで行けない」
普通の
私の
紐とベルトでグルグル巻きにされてた
大人しく夕方の【ロプノール】が止まるまでタブレットで時間を潰すことなり
その間、奈菜伍長はずっと私の相手をしてくれた
数時間たっただろうか、【ロプノール】が徐々に速度を落として止まる
奈菜伍長のインカムに連絡が入り、ホータン地区ホータン市1km手前で停まったことを知らされる
「到着して直ぐ連絡を取りたいかも知れませんが少し待ってて」
私は知らなかったが戦闘で出た負傷者を搬送してるのだと言う
固定された
さらに一時間経ち、準備が出来たので
外から見えないよう白い布が張られていた
「その機体は見られちゃまずいでしょ?」
奈菜伍長の気遣いに感謝しつつ、通信を始めると出たのはガブリエル・アームストロング
彼女は茶髪で碧眼の白人女性で年齢は私と同じぐらい
名前が長いのでみんなガブと愛称で呼んでいる
「Umm,(うーむ)……おはようございます」
「What are you speaking?(何言ってるの?)」
「日本語、挨拶」
カタコトになってるが日本語で話すつもりらしい
録画されてるので報告だけ済ませれば問題ないだろうと、理解できてるか分からない日本語で話して今日の通信(報告)は終わった
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