第20話 エイル・ストゥルルソン

朝、まだ日が出てない時間に目が覚めた

時間は午前4時半

流石に早いので寝直すかと思い目を瞑ろうとしたのだが、ふと扉の下に食事に目が止まる


「朝食?」


何故ここに朝食があるのか?

誰がここに朝食を置いたのか?

外に誰かいるのだろうか?

疑問を解くため扉を開けるとそこには神谷少佐がいた


「おはようございます」


「おはよう。 朝起きるのは苦手か?」


何となく分かってたが彼は偶然ここに居た訳ではなく、私が起きるまで此処で待っていたのだ


「そんなことは無いけど、今日は起きるのが早すぎる」


「そりゃ、今日はここを撤収する。

暑くなる前に撤収準備を終えないと地獄だからな」


砂漠で生きる知恵と言うか、知識として同じことを聞いた気がする

これは頭では理解してるけど経験として理解出来ていないのだろう


「…………なるほど、少し待っててください。

この後、大丈夫ですよね?」


「大丈夫と言うか輝月の(監視の)為に居るから時間は空いてる」


なんか目が覚めるぐらい恥ずかしいセリフを言われた

顔に出さないようにしたのが上手く言ったのか、神谷少佐は気づいてない


「それなら月基地に月基地に連絡するけど、赤い鋼鉄鎧レッドアーマーを使って大丈夫?」


私は名目上捕虜になっている

保護されてる状態だが、賓客の様に赤い鋼鉄鎧レッドアーマーを使う訳にはいかない


「問題ない。 暫く待ってるからゆっくり食べて、その後で格納庫に向かおう」


その言葉に遠慮なく時間を貰いゆっくりと準備してから格納庫の所に来た


「月基地との通信で必要なのは赤い鋼鉄鎧これだよな?

やっぱりそれは一人しか通信できないのか?」


「ええ、鋼鉄鎧メタルアーマーに乗り込んでハッチを閉めないと通信できないから一人しか通信できないわ」


二人で通信するなら追加で外部装置を付けないといけない

その外部装置も100年以上前に使われていた規格の物を使わないと起動しない

そんなに古い物は【ロプノール】に無く、町に戻る時に他も合わせて調達してもらうことになった


私は赤い鋼鉄鎧レッドアーマー乗り込みハッチを閉める


「それでどこで通信すればいいかな?」


格納庫ここではレーザー通信できないので甲板のヘリポートで行うことに



◇ ◇ ◇



【ロプノール】甲板のヘリポートには何かよく分からない機材が置いてあった


神谷少佐が言うにはレーザー通信を可視化させる装置らしい

スパイと疑っていないが念には念を入れると言う


「了解、これより月基地と通信に入ります」


通信許可を取ってから外部スピーカーを切り、通信状態に入るが


「外部の声は拾ってるか? 通信状態はどうなっている?」


などと聞いてくる

今は通信するために送受信機の光軸を合わせている最中で集中できない


「うるさい、ちょっと黙ってて」


送受信できる衛星は見つかっているが安定しないため微修正をしている

周波数を合わせる様に調整してるが、衛星は常に移動してるため難しい

送受信が安定した位置で一秒ほど受信出来ただろうか、送られてきたデータを更新することにより自動で安定した送受信できるようになった


「あー、もしもし、聞こえる?」


送受信できるようになったら直ぐに声が送られた


「聞こえる、映像はちょっと待って」


映像を繋ぐと私より少し年上の16歳ぐらいの女性の姿が見える


「エイルか、他の人は寝てる?」


「寝てるに決まってるじゃん、輝月の場所まだ日が出てないんだよ。

もう少ししたら先生と交代なんだけど待つ?」


「そこまで自由じゃないよ……」


最初から日本語で話しかけたことから私が日本軍国際連合と行動を共にしてることはバレてるみたい


彼女の名前はエイル・ストゥルルソン


私と同じ国際宇宙連合軍属の鋼鉄鎧メタルアーマーパイロット

彼女は私と同じように英語、ロシア語、日本語を喋れる

日本のアニメを見続けて言葉を覚えた変わり者で、金髪碧眼の美少女だ


「通信できてるってことは最悪じゃないんでしょ?

敵対的な組織に捕まったとは思えないし、友好的(?)な組織の中に居るっぽいね。

降下して位置情報だけ流してから以後行方不明だから皆心配したんだよ。

これまで何があったか報告を聞きましょうじゃないの」


「えーと…………。」


昨日の出来事を簡単に話すがエイルは余り真剣に聞いてない

この会話は録画されてるから覚えなくてもいいが適当すぎやしないか?


「うん、わかった。

一先ず無事が確認できたので良しとしましょう。」


うん、本当に聞いてたのだろうか?


「暫くはその日本軍と行動を共にするのね?」


「そのつもりです」


「なら周辺の情報やテロ組織、アラウィー戦線だっけ?

その情報も掴んだら連絡の時に渡すわ。

そうそう遅れたけど、輝月、地上に無事(?)降下おめでとう」


「ありがとう。」


「それじゃ切るわ、いつでも気軽に連絡頂戴よ」


そう言って切られる


「それで、ここからが本題。」


さっきまでの適当さが消えて真剣な雰囲気になる

演技だということが分かり安心したけど私って騙されやすいのかと不安になる


「日本に赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの解析をさせたのはいいけど、技術も日本に渡すつもり?」


「個人的には渡しても構わないと思う」


宇宙そらに上がる技術を持っていた日本だ

最初から私達の技術を渡す候補に入っていたので問題ないはず


「その場所からなら中国とインドも候補に入るけど、輝月がいいなら日本でも良いわ。

分かってるでしょうけど、輝月が持ってる技術は使い方を誤れば戦争になる可能性がある。

扱いには十分注意して頂戴ね」


「分かってる」


技術とは宇宙そらに上がる技術だ

今、私達が把握してる地上の技術では宇宙船を打ち上げたとしてもデブリを回避できずに墜落する

【アイギス】でデブリを破壊したとしても細かくなったデブリで宇宙船は破壊されるだろう

その問題を解決する方法は意外と簡単だ


回避できないデブリにぶつかっても耐える宇宙船を用意すればいい


言うほど簡単じゃない

出来たら苦労しない解決方法だけど私達は作ってしまった

それが出来たからこそ、オペレーション・メテオなんて計画が立ち上がった


つまり私が持つ技術とは、今までにない素材を作る技術だ

その素材は耐久は勿論、軽量で断熱性に優れてる


量産できるようになれば凄まじい経済効果を生むだろう

それこそ宇宙船を作っても元が取れるぐらいに


その技術が悪用されれば兵器に使われ戦争の切っ掛けになる


だから私は慎重に動かなければならない


「その様子だと大丈夫そうだね。

…………、言うか迷ったけど貴女達の所に中国軍が迫ってるわ。

日本に技術を渡すなら注意してね。」

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