第18話

地球に降下してから何時間が経過したのだろうか

部屋に時計はあっても来たとき時間が分からないから答えは出ない


降下した場所は砂漠と言うだけあって非常に乾燥して喉が渇く

私は寝ようと思ったのだけど、その前に飲み物が欲しくなったので監守(?)の奈菜伍長に頼みジュースを要望した

水でもいいがジュースを頼むのは飲みたいと言う欲求もあるが、赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの解析に言っていた「可能な限り要求を呑む」と言うのが、

どの程度可能なのか試す意味もある


「ジュース? いいけど何がいい?」


ジュースって言えばオレンジ、リンゴ、ブドウジュースぐらいでしょ?

全部あるとは思わないから二種類ぐらいしかないと思ってたら、他にも炭酸飲料などがあると言う


「その炭酸飲料って聞いても味が想像できない」


宇宙では炭酸飲料を作ってなかった

メーカー名で言われても知らないとしか言えない


「んー、分からないなら飲み比べしてみる?」


驚きの提案が奈菜伍長からなされた


「私が(独房の)外に出ていいの?」


「大丈夫、ロプノール内なら私か龍野少佐が居れば自由にして良いって許可が出てるから」


奈菜伍長と龍野少佐に不満は無いが二人だけでは少ないのではないだろうか?

そんなことを思うが、単に任せられる(暇な)人が居ないだけかもしれないので言葉にはしない


ロプノールの食堂は意外に独房から近く一つ部屋を挟んで隣にあり

食堂の扉を開け中に入ると龍野少佐が書類に何かを書いてるところだった


「龍野隊長お疲れさまです」


「奈菜伍長も深夜ご苦労さま」


二人が挨拶して私に視線を向ける


「それで神代さんを連れて如何したんだ?」


「彼女に飲み物(ジュース)と思ったんですが、何がいいか分からないので付いて来て貰ったんです」


と答えるのは奈菜伍長

何でも宇宙(主に月基地)で暮らしてたから水以外の飲み物が貴重で、合成の物しか無かったと説明してるけど、何で合成って知ってるのだろう?

多分、当時の宇宙食で調べたのだろうけど何だか常識知らずみたいで恥ずかしい


「地上のジュースを飲んでみたかったの」


つい、子供っぽく言ってしまい余計に恥ずかしくなる


「別に構わないが、ジュースだと喉が渇きやすいぞ」


それは初めて知った

ジュースだと純粋な水分以外にも色々含んでるからそうなるのだろうか?


「宇宙食の味と何が違うのか知りたかっただけだから大丈夫」


いくつかジュースがあったが気になってた炭酸飲料を開けるとコップに入れ飲む

その瞬間、口の中が溶ける様な刺激を受けて手が止まる


「何これ?」


「ただの炭酸飲料だぞ?」


「へー、これが炭酸なんだ!」


そんな話をしていると奈菜伍長が何か思いついた様子で悪い顔になりニヤついて


「龍野隊長、私はそろそろ寝るので彼女を元の場所に戻して貰っていいですか?」


などと言って断ろうとしてる龍野少佐に任せて食堂から去って行った

気を使って私達を二人っきりにしたのだろうけど他に方法は無かったのかと言いたい!


「奈菜伍長に気を使われたようですね」


龍野少佐は謝って来たが私は気にしていない

丁度いい機会と思い捕虜扱いだけ保護してもらった礼をする


「何だ、そんなことか。

それは俺の仕事を上司が的確に判断した結果だ、俺の御陰って訳でも無い」


お礼を言っただけだけど分かりやすく顔を赤くして照れてる

ここで言わなくてもいいのだけど、言い辛いことは時間が経つと余計に言えなくなるので会った時の返事を今返さないといけない!


「それで、えーーと、その、あの時の返事なんですが………、覚えてますか?」


「ああ、俺が貴女に初めて会った時に告白した返事だろ?」


やっぱり忘れるはずがない

上げて落とす感じになって悪いが、ここで返事を返さなければ次はいつになるか分からない

心苦しいが返事を後伸ばしにするよりはキッパリ言った方がいいだろう


「はい、それです。

それで、その…、すみません、結婚とかそんなこと言われても分かんないです。


…………友達からではダメでしょうか?」


分かりやすいぐらい絶望した顔をしてるが直ぐに持ち直し言葉を繋ぐ


「大丈夫だ、それじゃ俺達はこれから友達………、いや、戦友だな!」


そう言って彼は手を前に出した


「戦友」と彼は言った

一緒に戦った覚えはないが、同じ戦場で偶然出会い、友達になったことは確かに「戦友」と言えるモノだ


「そうですね、私達は友達と言うより戦友に近いですね」


と答え私も手を出して握手をする


戦友それなら苗字じゃなく、輝月って名前で呼んでください」


「分かった、輝月も俺のことは神谷って呼んでくれ。

龍野は二人居て呼びづらいからな、他意はないぞ!!」


これが俗に言うツンデレってやつだろうか?

需要があるのは女性だけで男性のツンデレとか誰得ですよ


「それじゃ、そろそろ部屋に戻るか?」


明日は早いので早く寝たほうがいいのだろう


「その前に一つ聞いてもらっていいかな?」


「なんだ?」


「私の何処に惚れたの?」


その言葉を聞いた途端、彼は魔法の様に固まってしまった

暫く無言のまま静かな時間が流れたが、答えられないなら構わない


「答えたくないならいいわ。

じゃ、好きなこと教えて」


と別の質問をしたら意外な答えが返ってくる


「ロボットだ。」


!?!?


「俺は昔からロボットが好きでな……」


そこから語られたのはロボットの何処が好きと言うことを語ったのだが、女の子に語る内容じゃ無い

…………でもそれは正解だったりする


私はロボットが好きだ

日本のロボットアニメは自由時間によく見ていた

娯楽が少ない宇宙ではドラマや映画、アニメなどが娯楽の全てだった

特に機械工学に興味を持ってもらおうと日本のロボットアニメを推奨して見せられた影響で、私は大のロボット好きになっていた


ロボットゲームもやってみたかったが、あるのは遠隔操作のロボットだけでゲームのイメージとは程遠い作業用のばかり使っていた

そんな時に知ったのが地上で使われている鋼鉄鎧メタルアーマーと呼ばれるロボット、否、正確にはパワードスーツに分類されるそうだが、どう見てもロボットにしか見えなかった


私はそれを作ってみたいと思いデブリスーツ(デブリ回収用の作業用防御スーツの略)を改造し、赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの原型を作った

これが大人たちに認められ本格的な改修を行い、私専用の鋼鉄鎧メタルアーマーが出来上がる


話は逸れたが、私はそれぐらいロボットが好きなんだ

私は聞いてるだけだったが、ロボットの話を楽しそうにする彼とは気が合う運命の様な物を感じた

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