第15話 補給部隊と合流

【ロプノール】から南南東に進むこと17キロ

道中は特に何も無く、砂漠に沈む太陽と画面に映った進路を確認しながらMAPを見つつ進むと、強行偵察時に後方に別れた部隊と思われる集団が見つかる


戦車2両、鋼鉄鎧メタルアーマー100機居るが戦車の砲が2門あることから敵のテロ組織とは違う

司令官おやじに聞いてた情報通りの数から味方に間違いないだろう


勘違いで撃たれては堪らないので白旗を掲げ部隊の進路を塞ぐ形で通信する


「こちら、日本国際連合所属の龍野少佐だ。 応答願う。」


「……こちら日本国際連合所属の青井少佐、目の前に居る試作機は隊長で合ってます?」


さすがに試作機を単体で運用してると不審に思われたが人手が足りないことを伝えると納得した


「そっちに合わせて並走するから減速せずに進んでくれ」


「了解」


向きを後方部隊に合わせる様に変え、速度を調整しながら合流する


「助かりました隊長。

隊長が出て来たってことはロプノールはこっちで合ってますね?」


「合ってるが少し進路がズレてる。

以後俺がロプノールまで案内するから進路を合わせろ」


「了解しました。

中隊長と小隊長は通信は聞いてたな? 以後の進路は隊長の紅白機に合わせて進行する」


「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」


部下達が進路を合わせたのを確認すると青井少佐から秘匿回線が入る


「それで隊長自らお出迎えってことは何か遭ったんですね」


それから【ロプノール】に到着するまでに起こった出来事を掻い摘んで説明した



◇ ◇ ◇



合流し来た道を戻って【ロプノール】の姿がカメラに捕えた辺りで通信が入る


「こちらロプノール、龍野少佐、案内ご苦労さまです。

援軍の補給部隊を率いてるのは青井少佐ですか?」


味方の識別信号で判断したのだろう


「そうだ」


「分かりました。

この後、戦車2両と鋼鉄鎧メタルアーマーは外で待機してもらうことになります

休憩を30分ほど取って貰ってから交代で警戒に当たってください

交代する人員は青井少佐に任せますので決まりしだいロプノール司令官室に連絡に来る様お願いします」


「了解」


「龍野少佐はそのままロプノールに、時間になりましたら司令官室に呼び出しますのでそれまで自室で待機して下さい。」


「了解」


青井少佐は中隊長を集めてローテンションを相談し、俺は【ロプノール】に入り試作機をメカニックに預けて自室に戻る


「ふぅ」


と気を抜いた瞬間、頭がふらっとした

考えてみれば鋼鉄鎧メタルアーマーで【ロプノール】から出た後はぶっ続けで働いてたんだ

そりゃ疲れも溜まるだろう


少しベットで横になりながら今日の出来事をまとめると、報告書に書く内容が多い

後で書くのも大変だろうと思い出しながら書いてくと、彼女、神代輝月かみしろきづきに関することが多く、自然とニヤニヤしてしまう

呼び出しが掛かった頃には報告書の内容が彼女のことばっかりになっていた



◇ ◇ ◇



呼び出され【ロプノール】の司令室に入ると、そこには司令官、副艦長、補給部隊の青井少佐、そして意外なことに神代輝月が居た

そのことに驚きと興奮があったが、表情に出さない様にし、用意されていた椅子に座る


「さて、これで全員そろったわけだが、青井少佐は今日起きた出来事を知ってるか?」


そこで俺と合流した後に受けた説明をこの場に居る全員にして、間違えてる場所や補足をされ正確に理解できた辺りで次の話に進む


「彼女、神代輝月を捕虜としたのだが、彼女は我々が知るテロ組織、アラウィー戦線のメンバーでは無いと判断している。

理由は彼女が中東系の顔をしていないこと、彼女の乗る赤い鋼鉄鎧レッドアーマーはアラウィー戦線が持つには分不相応に高い技術で作られてること、

アラウィー戦線と敵対し殲滅したこと、この三つを持って判断しているが異論はあるか?」


そこで青井少佐が手を上げる


「その赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの戦闘記録は映像があるなら見せてほしいのですが」


プロジェクターを用意し、アラウィー戦線の旧型戦車(99式戦車)と赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの戦闘が流される

最初から最後まで敵戦車を圧倒し続ける赤い鋼鉄鎧レッドアーマー

皆、内容は知っていたから驚かないが改めて見ると赤い鋼鉄鎧レッドアーマーは使ってる材質から違うのがよく分かる


「初めて見ましたが凄いですね。

我々が日本が完成間近にしてる鋼鉄鎧メタルアーマー泰山の性能を軽く上回ってます。

この映像を見れば彼女がアラウィー戦線や他国のスパイとは考えられません。

それで艦長(司令官)達は彼女を如何したいんですか?」


「それが今回の本題だ」


司令官おやじは状況や推察を交えてこれからの展開を話していく


「まず第一に安全を確保する。

色々あったが当初の目的通り敵軍事施設を発見した。

犠牲やハプニングもあったが最小限の被害で食い止められたと思うし、これ以上此処に居ても危険なだけだ。

一度撤退して援軍を呼び合流してから再び攻める予定になる。


彼女が言っていた3Dプリンターのこともあるが部隊を危険に晒してまで捜索することは出来ない。

撤収した後にロプノールをインターネットに繋ぎ、上層部に連絡と情報収集とデータ解析、

彼女は処遇は上層部の判断を仰ぐが、それまでは捕虜として保護し赤い鋼鉄鎧レッドアーマーの解析を手伝ってもらう

解析の報酬として可能な限り彼女の要求は呑むつもりだが、それでいいかな?」


司令官が彼女、神代輝月に聞くと


「私はそれで構いません。

赤い鋼鉄鎧レッドアーマー解析はその予定なので問題ないです。

3Dプリンターの件は出来れば捜索して欲しかったですが、無理を言って皆さんを危険に晒せません。

司令官がその様に判断したなら従います」


「よし、それでは撤収作業に入る。

物資は詰めるだけ詰めたな?」


この質問は副艦長が答えた


「はい、敵味方問わず壊れた鋼鉄鎧メタルアーマーや投車器、隕石の破片などを詰め込みました。」


「撤収するのは日が完全に落ちてから1時間後にする。

まだ数十分はあるから警戒は機械任せにして少しでも休んでおく様に通達せよ」


「「了解」」


数十分の休憩後、全機明りを消し、火を焚いて残す


「用意できたな? 全機、撤退する!!

火は消すなよ、敵に気づかれるのは遅い方がいいからな!」


静穏モードで撤退開始


敵は翌朝、明るくなってから撤退したことに気づいたらしい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る