第14話 尋問

私は独房に案内された

暫く私の部屋になる独房内は、よくある汚い、臭い、暗いといったイメージと違い、

白で統一された室内は綺麗で明るく臭くもない

ベットと机が在る以外は何も無く、何か必要があれば用意すると説明された


私は書類を書くための筆記用具をお願いして気づく


「そういえば私は日本語は話せるけど、文字は英語とロシア語しか書けないのだけれどレポート(?)は英語でいいかな?」


そう言うと困ったように奈菜伍長は唸り


「書けないのなら仕方ないね、英語で提出してもらうけど、その前に私が尋問するわ。

一人だと問題になるからもう一人連れてくるけど、他に何か欲しい物ある?

持ってくるわよ」


暇つぶし用の本だけお願いして奈菜伍長は鍵を閉めて出て行った


誰も居なくなった独房で一人することが無いので体を動かして調子を見ると、

やはりと言った感じで動きが鈍いし足の筋肉はパンパンになってる

宇宙で1Gの重力に慣れるための訓練を積んでも付け焼刃でしかなく低重力障害と言うより低重力体質になってる体が

どこまで地球環境に適応できるか成長と共に自分で確かめるしかない


年齢的に幼い私だからこそ成長に合わせて地球環境に適応できると考えられて送られた


簡単なストレッチをして時間を潰してるとブザーが鳴って部屋のドアが開き、奈菜伍長と龍野さんが姿を見せる


「お待たせしてごめんなさい、尋問は私と少佐が行います。

確か貴女は宇宙から隕石と共に降下してきたのでしたね?」


「そうですけど、まだ疑ってます?」


「半信半疑と言うところですね。

貴女は捕虜と言う形で保護されてますが、現在の捕虜の扱いとか知りませんよね?

拷問(虐待)はしない、食事は朝昼晩の三食与える、名誉などを傷つけない、

言い回しは違うけど簡単に言うとこの三点が守られるのが捕虜よ」


そこで机の上に四角くて黒いボイスレコーダーが置かれる


「尋問はボイスレコーダーで録音され記録として上に提出されるわ。

喋りたくなければ黙秘でいいし、協力するつもりがあれば喋ってくれると嬉しいわ」


「分かりました」


ボイスレコーダーのスイッチを入れた後、龍野さんが前に出て来た


「私が尋問を担当する龍野神谷少佐だ。これより開始する。」


最初に聞かれたことは意外にも宇宙そらのことでは無く、私が乗ってきた鋼鉄鎧メタルアーマーについてだった


「私が乗ってた鋼鉄鎧メタルアーマーは其方の鋼鉄鎧メタルアーマーと見た目は同じだけど中身は人間と猿ぐらい違うわ」


当然、私が乗ってる鋼鉄鎧メタルアーマーが人間で、一般的な鋼鉄鎧メタルアーマーは猿だ


オペレーション・メテオの降下時に迎撃され落下地点がランダムになることは予想されていた

当然、戦場に降下することも考えられてたので私一人で切り抜けられる様に、鋼鉄鎧メタルアーマーの性能を可能な限り上げてある

性能差では地上の一般的な鋼鉄鎧メタルアーマーの1000倍とか聞いてるけど、絶対に盛ってる数字なので正確な数字は知らない


「知らないと言うより分からないと言った方が正確ね、地上と連絡が取れない宇宙そらで作った物、

地上運用も今回が初めてなら、地上の鋼鉄鎧メタルアーマー能力も知らないし、運用も違う。


違いの一つがヘリウム3を使った核融合炉を補給要らずのエンジンとして使用してる点ね」


地上に降りた私は月から補給できるはずも無いので基本現地調達だけど、エネルギーまで現地調達できると思っていない

それなら補給しなくていい物を使えばいいと考えられ作られたのが核融合エンジン

幸い比較的扱いやすい材料ヘリウム3はたくさんあったし、小型化も難しくなかった


「宇宙じゃ1Gの起動実験ができなかったせいで耐久は無駄に高く設定されてる」


おかげで5mほど跳んでもフレームの歪みが全く無かった


「武装は全て電気を使うレールガン式で金属を3Dプリンターに取り込んで銃と弾を生産し、敵勢力に抵抗する予定だった……」


「待て、それは見つからなかった3Dプリンターで作れる武器か?」


「そうだ、地上に落ちた時に行方不明になった」


私の探し物の重要性が分かった様で真っ青になっているが、

何か考え付いたようで元の色に戻った


「3Dプリンターは月面基地建設の際に地上で作られた物と殆ど一緒で地上で使えないと言うことは無い」


「そんな危ない物を何の知識も無しに使える物なのか?」


「当然用心もしてる。

その一つがデータの分別で、武器と弾丸の作成データは私が肌身離さず持ってる。」


「なら安全………、でもないのか?」


その通りで作成データが無くてもことは可能で、例えば、

拾った武器を分解バラして3Dプリンターに鉄くずとして取り込むと解析して同じ物を作れてしまう可能性が高い

そのことを伝えると彼は酷く慌てて


「分かった、直ちに捜索に当たる……っと言いたいがロプノール付近を捜索して見つからなかったら諦めるしかない」


「なんで!?」


「この辺は敵地に近すぎる、一旦体勢を整えるために後方へ撤退しようとしてるところだ」


「少佐なんでしょ? どうにかならないの!?」


左官クラスの彼なら捜索に留まるよう現地司令官を説得できないか聞いてみるが無理とのこと


「…………そう」


その後、淡々として尋問を行い終わったころには疲れでベットの横になり眠ってしまった

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