第12話 会話と司令官

結局3Dプリンターは見つからなかった


あれは地上に降りた際の物資不足を補う為、現地で手に入れた材料を加工する能力があり、

地上なら降りた場所次第だが大抵の日用品は作れた


逆に、それがあったからこそ荷物は最低限にして降下してきたのだ


私が探してる理由は物資不足解消以外にも3Dプリンターそれが危険な理由があるからで

物資(金属)さえあれば武器さえ作ることが可能で、レールガン主体の兵装がデータとして入ってたはず

そんな危険な物を放置できないが一人で見つからないなら彼等に協力を仰ぐのが正解だろう


私は彼等が拠点としてる【ロプノール】の中に招かれた



◇ ◇ ◇



ロプノール内のドック


エアダスターで全身の砂を吹き飛ばされた後にロプノール内のドックで鋼鉄鎧メタルアーマーから降りると何故か歓声が上がる


「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」


「ふぅ、ここがロプノールですか」


何か白いだの美人になるだの言われてるが気にしたってしょうがないので周りを見渡すとドックと言うだけあって

予備と思われる鋼鉄鎧メタルアーマーや腕や足とパーツごとに分けてる物もあり、とてもワクワクする


「こんにちは、私はロプノールのオペレーターをしています七海奈菜です。日本語で大丈夫ですよね?」


「はい、日本語で大丈夫ですよ。私の名前は神代輝月かみしろきづき、私の事情を話したいのですがここの司令官と会えますか?」


「話は聞いています。司令官室でお待ちですので私の後に付いてきてください、それと其方の鋼鉄鎧メタルアーマーは私達が整備しましょうか?」


仮にも兵器扱いの鋼鉄鎧メタルアーマーを他国の者に整備させることは無い

あるとしたら整備という名目で技術を盗む場合しかないだろう…………、と思う


正直、100年以上交流していないとその辺の常識とか分んないんだよね


「下手に弄らないで、それには核融合炉が積んであるから失敗したらドカンだ」


その言葉を聞いた者は一部のメカニックを除いた全員が私の鋼鉄鎧メタルアーマーから一歩後ろに下がった


「マジか?」


「いやいやいや、…冗談だよな?」


と言う反応から


「核融合炉、実在したのか」


「これがあれば巨大ロボットも夢じゃないっすね」


と言った浪漫を追い求めるメカニックの反応や


「この大きさだと大した電力賄えないんじゃないか?」


と言う現実を見据えた反応まで様々だった



「………聞きたいことが増えましたね。 司令官がお待ちしておりますので詳しいことは其方でお願いしますね」


司令室までの通路に変わったことも無く、普通の船の通路を進むと辿り着いた

コンコンとノックし要件を告げる


「司令、例の彼女を連れてきました」


「入れ」


そこに居たのはいかつい顔をしながら気疲れした様な中年男性が机に座っていた


「始めまして、私がこの部隊を指揮する龍野大佐だ」


「初めまして、私は神代輝月かみしろきづき、国際宇宙連合軍属の鋼鉄鎧メタルアーマーパイロットです」


座ったまま私の挨拶を聞いた龍野大佐はさらに疲れた様な表情を見せる


「はぁ、その国際宇宙連合所属と言うのは本当か?」


「はい、本当です。証明せよと言うのなら私の監視の元に鋼鉄鎧メタルアーマーを分解すれば既存の物と違うことが解るでしょう」



「現在、国際宇宙連合は存在しない。

100年以上前に起きたケスラーシンドロームで宇宙と地球は断絶され、

通信すら取れなくなった。

宇宙に居た人々は食糧を失い全員死んだと聞いてるし、俺もそうだと思っている。


だけど、だけどだ、君の乗ってきた赤い鋼鉄鎧メタルアーマーは既存の物と違うと言うのは分っている。

それが我が国の試作型鋼鉄鎧メタルアーマー泰山たいざんと同等もしくは上回っている可能性があるのが問題だ! 

さらに国家機密に当たる兵器それが一人でこんな僻地で運用されてるのもおかしければ簡単に分析させてくれるという

そのことを考えると君が言ってることは全くの出鱈目と言うには度が過ぎてる


それぐらい突拍子のないことなんだ。

正直、私の手に余る案件だ、上に判断を仰ぐが君と会った場所が場所だけに捕虜扱いになり独房生活になるが構わんか?」


前半は冷静に喋ってたけど、後半は溜まった思いを吐き出すかのような勢いで語った龍野大佐

私の国際宇宙連合という言葉でこれだけ悟ったのだから、私が言いたいことも分からないなりに悟っているのだろう


「始めから信じて貰えると思わなかったので捕虜扱いされるのは構わない。

むしろ、捕虜として丁重に扱ってくれることに感謝する」


「嫌味にしか聞こえん。 

君のことを今、口頭で語られても確認に手間取るだろう。

そこで独房に書類を送るから君が来た理由を書いて提出してくれ、勿論そこに要望なども書いてもらって結構だ」


「確かに口頭で一度に伝えるには量が多いし聞き漏らしもあるので私としても其方の方が助かる」


「そうか、奈菜伍長は彼女を独房に連れて行き、生活に必要な物と書類を用意してあげなさい」


私の左後ろで待機してた奈菜さんが敬礼し、私を独房へ連れて行こうと部屋を出ようとした時に龍野大佐から声がかかる


「待て、忘れてた。

この辺りには国連軍と言っても日本軍しか居ないが明日には他国の軍が隕石調査に来ると予想される。

私達はその前に君の持ち物を出来る限り回収するが、本国の命令しだいで如何なるか分からん。一応覚悟しておきたまえ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る