第8話 勘違いから始まる戦闘

龍野さんは私への思いを振り切るように、一直線に味方のもとへ走った

その後から戦車のキャタピラの音が聞こえてくる


私は鋼鉄鎧メタルアーマーの非常用の小窓を開き外を見ると、近くにある穴から戦車が出てくるところだった

囮として残った私は時間稼ぎに会話してみることにした


「Hello, can you speak English?(こんにちは、英語は話せますか?)」


鋼鉄鎧メタルアーマーの)両手手を上げ、投降の意思を示して話しかけてみるが反応はない

反応はないが戦車は止まったので聞こえてはいるのだろう

それとも逃がした鋼鉄鎧メタルアーマーを探しているのだろうか?

なら注意を引き付けるために注目してもらわないと困る


「还是中文好吗?(それとも中国語が良いですか?)」


英語だと言葉が通じてないと思い中国語で話しかけてみるが返答は無い

だけど英語で話したときとは違い、通信して上の指示を仰いでるのが戦車からの電波状況で分かる


「懂我的言词? 白旗没有,不过投降(私の言葉は通じてるよね? 白旗はないけど投降します)」


投降の意思を示した後に戦車のハッチが開き兵士が顔を出す


「If it's a surrender, get out of a Metal armor, make both hands behind the face and lie down in the ground!

(投降なら鋼鉄鎧メタルアーマーから降りて両手を顔の後ろに組み、地面に伏せろ!)」


英語かよ!!っと心でツッコミながらも相手の顔を見ると中国人というより中東系の濃い黄色人種の顔つきをしている

相手の要求通りにしてもいいのだが放射能測定器ガイガーカウンターが5ミリシーベルトを記録してるので、出来れば汚染されてると思われる砂の上に伏せたくない


「This doesn't have a weapon. think it's Spoil to carry to a base to deprive a Metallic armor.

(こちらは武器を持っていません。鋼鉄鎧メタルアーマーを鹵獲するのならこのまま基地に運んだほうが良いと思いますよ)」


「As it is directed because it's good, lie down in the ground.

(いいから指示に従って地面に伏せろ!!)」


戦車が徐々に砲身をこちらに向け始めた

この時代に戦車が威嚇目的に砲身を向けることは無い

【アイギス】という絶対防空システムが出来たことによる弊害とも言えるが、

砲身を向ける=反撃を受けても仕方ない、という図式ができてしまった


それは砲身を向けて止めた時点で【アイギス】が発射する前段階と判断し、迎撃するために砲弾を撃つことが確定されてる

その段階で迎撃のために撃ち返さないと迎撃が不可能という事情もあって威嚇のために砲をこちらに向けたという言い訳は許されない


私はそう聞いたし、宇宙で無線を傍受し解析した結果として地上ではそういう扱いだと聞いた

つまり砲身を向けるということは=撃つという意味であり、今ゆっくりと向けられてる砲は私に向く前に投降しろと言う意味だろう


「No, I can't go out until safety is secured!

(無理、私は安全が確保されるまで外に出れない!)」


「Why is it?(何故だ?)」


相手の言葉のタイミングで砲身が完全にこちらを向いて来たので外れるように左に進む


「Stop, Stop, why does move?(止まれ、止まれと言ってるだろ!?)」


「………話が通じない」


止まれと言いつつ砲身を此方に向けるな!


戦車長が拳銃を取りだし此方に向け撃ってきた


そんなことをしたら逆効果だろうに足を撃って止めようとしてる

拳銃じゃ鋼鉄鎧メタルアーマーの装甲を貫けるわけないし、足に伝わる衝撃も微々たるものだ


この様子じゃ鋼鉄鎧メタルアーマーから出たら蜂の巣にされるか戦車に潰されるのが落ちだ


捕虜になろうと思ってたが死体になりたい訳じゃない!!

鋼鉄鎧メタルアーマーの武器がないから戦車相手に何もできないと思っているんだろう


戦車長に向かって手を下ろして前に伸ばす

手のひらを見せてることから止めてくれというジェスチャーに見えたのか戦車長がニヤっと笑い拳銃を下す


その判断は間違いだ


手を武器として発射する

俗に言うロケットパンチというものだが、父さんの趣味(ロマン)で装備することになったコレが役に立つとは……、何があるか分からないものだ


戦車長はロケットパンチで首に取りついた手の勢いが強すぎたせいで首の骨が折れ動かなった

戦車内から声が聞こえてきたが戦車長が死んだことには気づいていないだろう


私は戦車長を離し、ハッチに鋼鉄鎧メタルアーマーの手を固定しジャンプすると、5mほど飛び上がり手に着いたパンチ回収用ワイヤーを巻き取って戦車の上に着地する

その瞬間、戦車は大きく沈みキャタピラーが衝撃を吸収し逃がす


中から慌てた声が聞こえるが無視して死んだ戦車長の引きずり出すと、腰に拳銃と手榴弾を発見、手榴弾だけ取り外して戦車の中に入れ離れるとボンっと言う音と煙がでた


「捕虜になるつもりだったのに倒してしまった……、どうしよう」


安全が確保されるから捕虜になるんであって安全が確保されないなら抵抗するのは当たり前で、砲身を向けるようなことをすれば抵抗するのは当たり前なのになんで途中で止めなかったんだろう?


この時、私は勘違いをしていて、【アイギス】を搭載してる物に威嚇で銃身や砲身を向けるのは御法度だが鋼鉄鎧メタルアーマーは【アイギス】を積んでいないので威嚇に砲身を向けることは有った

それを知らない私は私の鋼鉄鎧メタルアーマーと同じく全ての鋼鉄鎧メタルアーマーは【アイギス】(正確に言うなら似た別物)を積んでいると勘違いしていた

その結果が目の前の戦車である


空は晴れてるので戦車の影で宇宙に連絡し、その後の説明で気づいたが後の祭りである


敵の増援が直ぐ来ないことから此方の様子に気づいた気配はないのが幸いだが、いずれ味方が返ってこないことを不審に思い増援がくるだろう

それ以前に食糧と水がない


私の戦場ピンチはまだまだ続きそうである

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