第5話 囮
俺は彼女を見た瞬間、恋に落ちた
俗に言う一目惚れ
俺は出会った衝撃と衝動のまま、勢いで人生で初めての告白をしたのだが嫌われてないだろうか?
暑い、これが恋の熱だろうか、否、ここはタクラマカン砂漠だった!!
「しまった!? 早くハッチを閉めてくれ!!」
「?」
タクラマカン砂漠は核実験をやった地域だ
残存してる放射線がどの程度か知らないが生身で外に出る場所じゃない
こんな基本的なことを忘れるなんて、俺もあの爆発で混乱してたらしい
「………
「こちら
ロムノール、指示をお願いする。」
「何? 少し待て」
彼女の方を見るとハッチを閉じて
カメラを切り替え通信先を探そうとするが何故かレーザーが上を向いて、この場の誰とも通信する気配が無い
まさかと思い上空を見るがレーザー通信を中継してる飛行機なども無く、何処と通信してるのか不明だ
「ねぇ、そこの……龍野さん」
「何だ?」
彼女に呼ばれただけでドキドキする
「(結婚の)返事は後で、それより
そこで周りを見て状況を思い出す
テロ組織と戦闘中に資源衛星が隕石となり落下
地面にぶつかる寸前に大爆発し、爆風と衝撃で木の葉の様に吹き飛ばされた
のんきに話していられたのは周りに彼女以外、誰も居なかったからだ
「ここ、敵地のど真ん中じゃん」
元々、強行偵察で敵地に潜ってたのに吹き飛ばされたことでさらに奥に入ってしまった
さらに運が悪いことに、俺達の目的の一つ放置された中国の軍事施設の入り口を発見
考えてみれば当たり前のことだ
奴らはここを発見されたくないから攻撃を仕掛けてきた
それを簡単に撃破したから誘導され、罠にかかった
恐らく罠の位置自体が入口近くに設置されていたのだろう
このタイミングで不幸にも
「簡単に説明すると、ここは戦場で俺達は敵基地の目の前に居る。周りに味方は居ないし隠れるぞ」
急ぎ隠れようとするが、彼女は動かない
「どうした? 早く隠れないと!!」
「無理、私の外装は目立つ
「じゃぁ、どうするってんだ!!」
そこで少し冷静になると隠れるのは不可能と気づく
隠れる場所はあるが足跡を短時間で消す方法がない
ここが砂漠でなければ方法はあっただろうが
普通に足跡を消すと消した後が残り素人でも少しよく見れば分かってしまう
「気づいた? この場を乗り切るには彼方と私のどちらかが囮になるしか無い。
この場合、味方が居ない私が逃げても意味ないから彼方が逃げるべき」
彼女を囮にすると考え、全身から血の気が引いた
「ダメだ、囮は俺がなる。貴女の様な美人をテロ組織に渡したらどうなるか分からない」
「私の
「だが女性を、好きな人を囮になんて出来ない!!」
「大丈夫、捕虜になっても協力的なら酷いことはされないし、身を守る切り札もあるから安心して」
長く話す時間は無かった
軍事施設の入口から戦車の駆動音が聞こえてきた
「私は大丈夫って言っても聞かなそうだし、これを渡しとくね」
ハッチを開け彼女が手を伸ばしてくるので
「それは私の写真付きプロフィールデータと3Dプリンターのデータ。
それを上の偉い人に渡して」
「おい、これから死ぬみたいじゃないか!!」
「大丈夫、結婚の返事を返すまで死ぬつもりはないわ」
「!!」
「さぁ早く行って!!」
うれしいが何か誤魔化された気がする
感情では納得できないが、頭では理解している
「これがベストだ、分かっている、分かっているんだ……。」
一度連絡が来た時に【ロプノール】の位置は分かってる
そちらに走りながらカメラで彼女を見るとハッチを閉じて
彼女が囮となってくれた時間でなるべく距離を稼ぐため全力で走るが、いずれ追い付かれるだろう
追い付かれるまでに【ロプノール】に発見されれば助かる
「分かっているんだよ、ちくしょー……。」
彼女の努力を無駄にしないために一秒でも早く走る
同時に【ロプノール】に連絡
「こちら
「こちらロプノール、どうした?」
「目的の施設入り口を発見……、俺は…彼女を囮に………逃げてきた」
報告のために事実を言おうとすると涙が出てくる
「彼女、何のことだ? 報告は分かりやすく正確にしろ!」
「……あ、赤い
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