第4話 命がけの降下

先生こと父さんの、シャトルが資源衛星【Asteroid 12】から離れていく

もう二度と会えなくなるかもしれない最後の別れは済ませた


生存率20%


オペレーション・メテオで私が生き残るとされる適当に出されたと思われる確率

適当にと言うのは、それほど運要素が高いからだ


レーダーをすり抜けて宇宙ゴミ(以下、デブリ)に当たる確率

地上の対デブリ用迎撃ミサイル、もしくはレーザー兵器で迎撃される確率

うまく地上に着陸(着水)できる確率


地上に降りるだけで上記の三点、さらに地上での行動も追加すれば適当に考えられた確率と言うのも頷けるだろう


「可能性を述べるなら、想定外の可能性も有る」


アポロ13号の帰還ミッション並に困難だがやるしかない


「オペレーション・メテオ、最終チェック開始」


噴射ノズル…………、正常

分離機構……………、正常

冷却システム………、正常

各部センサー………、正常

鋼鉄鎧メタルアーマー………………、異常無し


「システムオールグリーン、オペレーション・メテオ開始します」


開始ボタンを押すと徐々に地球の重力に引かれていく

ゆっくり加速しながら、デブリにぶつかりながら進んでいく


「レーダーに反応、大型デブリ、衝撃に備えてください」


10cm以上のデブリは回避推奨だが乗ってる資源衛星これに避けるほどの機動力は無い

当然ぶつかるが、その程度では進路がわずかに変わるぐらいだ


「レーダーに反応、大型デブリ、衝撃に備えてください」


「思ったより五月蠅いし切るか」


資源衛星の名残でデブリ感知システムが稼働してた

デブリの膜に突っ込むオペレーション・メテオでは只の五月蠅いだけのシステムでしかない

デブリ衝突で揺れてるが、中軌道にも入っていないのに多く感じる


大型デブリにぶつかる度に進路が徐々に変わって行く

ここまでデブリにぶつかると進路も何も無い


「やっぱり、予想通りの運ゲーだ」


大体の直径が1kmほどある資源衛星これだけど中は虫食い状態

そんな資源衛星これに砲弾クラスのデブリがぶつかっている

多少資源衛星の外側が壊れようが問題ないが、私の居る区画と資源衛星制御区画は壊されると詰む

私は今乗っている資源衛星これが壊れないことを祈りながら大気圏に突入を確認した



◇ ◇ ◇



その頃、地上NASAのミッションコントロールセンター(宇宙管制センター)

直径1kmの巨大隕石が落下してるとシステムから通達があり大慌てで対処している


「12番アステロイドの落下を確認!!」


「予測落下地点、イギリス南方海域!」


「イギリスにて超高出力レーザー確認!!」


「カナダ、欧州で迎撃ミサイルとの連絡入りました!!」


直径1kmの巨大隕石が落下すれ地球規模の大災害が発生する


海なら確実に津波が発生して近場の沿岸に相当の被害が出る

地上ならアメリカのバージニア州に相当する広さが壊滅

吹き飛ばされた塵が太陽の光を遮り、急速に下がり、

植物は育たなくなり地球規模の大飢饉が発生し、人類の何割か死亡する


当然、防げるなら防ごうとする

その結果が超高出力レーザーと迎撃ミサイルの嵐だ



◇ ◇ ◇



大気圏降下中はセンサーなど何も使えないので何もできない

そんなこと言っていられないほど死の危険を感じている


「ビー、ビー、ビー、鋼鉄鎧メタルアーマーの温度上昇、危険、危険」


「ビー、ビー、ビー、ミサイルと思われる攻撃で一部センサー切断、12番アステロイド分割開始」


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理、死ぬ、死んじゃう、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死む、死ぬ、ぬ!!!!」


ストレスが掛かり過ぎて何を言ってんだか分からない

気分はさながらライカ犬(過熱とストレスで死亡した宇宙犬)状態の私はAIが緊急処置として睡眠薬を打ち、気づいたら地上で鋼鉄鎧メタルアーマーのまま転がっていた


「周りを確認しないと」


衝撃で目を覚ました私が動こうとすると何かに取り押さえられそうになる


「???」


意味が分からないが訓練した体が反射的に動いて取っ組み合い状態になってしまう


「Stop Please stop. I have the no will against which I fight.

(待って、待ってください。私に戦う意思は有りません)」


「Why, English? Aren't you Chinese?

(なぜ英語だ? 中国人では無いのか?)」


「I'm half in Japan and Russia.

(私は日本とロシアのハーフです)」


よく分からないが集音マイクやスピーカーの機能は生きてるらしい

でも映像は拾えてないことからカメラが死んでいる

何がどうなってるか分からないが目の前に人が居るらしいことは分った


「なら日本語は喋れるのか?」


「あ、日本語、……もちろん喋れます!」


「日本人のハーフなら顔を見せてから武装解除しろ、そしたら降伏を受け入れる」


「この状態だとハッチが開きません、手を放すので下がってもらえますか?」


言われるままにハッチを開けてしまう

今思うと混乱してたとはいえ非常に迂闊な行動だ


「これでいいですか?」


地上に着陸できた

鋼鉄鎧メタルアーマーのカメラは死んでたので初めて見る外の景色


暑い、暑い、一面砂だらけの世界に青い空


最初見た地上が砂漠とはいえ、私の後ろに戦闘の痕跡があったことを考えると

戦闘の生々しさを見ず幸運だったのだろう

初めて見た地上の景色は美しかった


「……美しい」


そんな私の心を代弁するかのように彼は美しいと言った


「はい?」


ここは地上だ、地上で彼は地球人

こんな光景など見慣れてるだろうに美しいとは何だろう?


私の鋼鉄鎧メタルアーマーと同じように正面の装甲を開け相手の顔が見える


黒髪、黒目、短髪の日本人男子

私の母が日本人だったので、日本人と分かる

顔は整ってるが鋼鉄鎧メタルアーマーに乗ることを考えると童顔に見える青年だった


「私の名は龍野神谷たつのこうや、ここに派遣された鋼鉄鎧メタルアーマー隊の隊長です」


「ご丁寧にどうも、私の名は神代輝月かみしろきづきです」


「惚れました、もう少し大きくなったら結婚してください」


「はい? 何を言ってるんですか?」


本当に何を言っているんだ?

一目惚れとは何?


結婚という概念は知ってるが、そんな文化は宇宙の私達には無いのだけれど………

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