第2話 宇宙Ⅱ

宇宙ゴミは他の宇宙ゴミと衝突して数を増やして地球を覆う

この現象は、提唱者の一人であるNASAのドナルド・J・ケスラーにちなんでこう呼ばれるようになった


ケスラーシンドローム


100年以上前に宇宙ステーションの爆発で起きたそれは低軌道上で発生し、

地球から宇宙に上がれなくなったが、逆に宇宙から地球に戻ることは出来る


オペレーション・メテオは文字通り隕石になって地球に落下するという作戦だが、

それには何故隕石を使うのかと言うところから語らねばならない


現在の地上では隕石がいつ接近しても迎撃して破壊することが可能だ


それはケスラーシンドロームが起きて少したったころ人工衛星が都市部に落下する事件が起こった

防衛上、非常に危険な状態とされ各国対空兵器で迎撃できるよう開発競争が激化し、さらに人工衛星や弾道ミサイルが使えなくなったことによる各国の軍事バランスが崩れ大戦が勃発

この二つの相乗効果で対空兵器はみるみる性能が上がり、最終的には絶対防空システム【アイギス】が出来たことにより

隕石や人工衛星の事故を未然に防げるようになった


「でもそれは私達、宇宙に上がった人類全てを隔離することに他ならない」


まったく、戦争のドタバタで私達(宇宙に上がった人)を死亡扱いするなんて馬鹿なことした地球人達

彼等は私達が地球に戻るときも【アイギス】で迎撃してくる


事前に電波を飛ばして連絡した時も、誰かの悪戯扱いで処理されたらしく迎撃され1名の犠牲者が出た


もう一度同じことをやって悪戯扱いされたら私が死ぬだけなので、

最初から迎撃される前提のオペレーション・メテオが組まれた


迎撃さえるなら迎撃できない物を作ればいい


そんな単純な考えで用意されたのが、資源衛星【12th Asteroid】だ

番号しか振っていない直径1kmを超える小惑星で、

資源は殆ど取りつくし破棄される予定だったのを今回のオペレーション・メテオに

使うため少々改造された小惑星だ


「大気圏突入後の落下予定地点は太平洋だけど、デブリ衝突や迎撃によって落下地点が変わる可能性がある。

海が約71%、陸地が約29%の確率で落ちるから運が悪くなければ海に落ちるだろうけど、海以外に落ちた場合の対応はいいね?」


「大丈夫です先生、海なら貝を、陸なら植物を食べて過ごします」


「うん、それがいいね。動物や魚など動く物を素人が取れると思わないほうがいい。

地上に降りた直後は低重力障害があるから特に気を付けるんだ」


「分かりました」


「海の深い地域だった場合は海流に流されながら浅瀬を目指すといい。三日分の食糧があるから恐らく持つはずだ」


「はい」


「陸の場合、晴れてれば私達とレーザー通信ができる。通信に問題なければ私達がアドバイスしよう。」


「はい、通信に問題がある場合はマニュアル参考ですよね?」


「恐らく大丈夫だと思うが、落ちた時の衝撃で通信が壊れた場合は安全な場所に避難してから修理、迂闊に通信できない地域、戦場もしくは軍施設の場合は話し合って大丈夫そうなら流れに任せ、危なそうなら逃げろ」


「この鋼鉄鎧メタルアーマーなら大丈夫ですよね?」


私の生命線、3mぐらいの赤い鋼鉄鎧メタルアーマー


宇宙から見やすいように赤い派手な見た目をしてるパワードスーツ

装甲はナノマシンを利用した複合装甲で出来ており、硬く衝撃吸収にも優れた装甲で、多少傷ついても自動修復できるのが最大の特徴だ


「安心していい、この鋼鉄鎧メタルアーマーは計算上では地上にある最新型鋼鉄鎧メタルアーマーより3倍性能がいい!」


「………赤いからとか3倍とか言わないですよね?」


「赤いから3倍と言うのは浪漫だが、さすがにそれは無いぞ。

万が一の確率で戦場に落ちた場合を考えて可能な限り高性能にした結果だ。

コンセプトはワンマンアーミーを目指したと言ったところだ」


「結局浪漫じゃないですか」


「ワンマンアーミーと呼ばれる程度の性能が無ければ……、死ぬだけだろう。

ただでさえ、死亡リスクが高く、うまく行っても数年から数十年経たないと此方には戻れない。

なら可能な限り性能を上げるのが親心と言うやつだよ。」


「その親心は先生として? それとも父親として?」


「両方だけど主に父親としてだ、娘に非情な任務を言い渡す私を許してくれ」


父さんから渡される一つの懐中時計


「これは月面基地建設を記念して造られた懐中時計だ。

ふたの裏に写真を入れられるようになっててな、ここに私達の家族の写真があるから大事にしろよ」


そこには私達家族4人が写ってる写真があった


「そろそろ時間だ」


下手をすれば一生の別れ

幼い私はどんな顔をすればいいのか分からないが、とりあえず笑う


「父さん、神代輝月行って参ります」

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