一章 三節 ししるいるい

 その日、国松重石は普通に起きて、登校して、部活動をして、帰宅した。

 起きたのは朝。ベッドの上。変な女もいない。家にも街にも人がたくさんいて、刀は出てこない。

 しかし記憶は確かなものとして刻み込まれていた。

 夕刻、最寄駅からの帰路。思い立って昨日訪れた公園に足を運ぶ。変な女は、いた。

「やあ。また会ったね」

 藻間中瀬は左指、照準の先で見せたものと変わらない笑顔であった。

「聞きたいことが山のようにある。今度こそ本当のことを言え」

「また不定期であるから。よろしく」

 告げて、公園を後にする。

 誰もいない橙の道を歩く影を見送った。

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