第21話 山田さんの目覚め2

 私、これから社会に戻る山田さんに気の利いた事が何も言えない。

 何だか、山田さんは魔女にならなかった私のような気がして……


「!」


 山田さんが私の手を握ってくれた。

 前にオーロラの魔女の家で叔母さんが私の手を握ってくれた時のように。


「ありがとうございます。ワタシ、ここにこれて良かったと思います」


「そんな、私はまだ見習いで何も出来てないですし」


「目が覚めて落ち着いた頃、文乃さんが話し相手に来てくださって対等というか何かを強要や強制されるのではないんだなって安心したんです」

「強要や強制だなんて……」


「眠る前の事、あまりハッキリとまだ思い出せい事もあるんですが、休め休めって強要や強制をされてたという感覚だけはあるんです」


「それは山田さんを心配して」


「そうですよね、ワタシも分かっているんです。けど何か辛かったんです」


 今度は私が山田さんの手を握った。

 言葉はいらなかった。

 本当は「大丈夫ですよ」ぐらいの事は言った方がいいのかなとも思ったけれど、私にはまだこうやって山田さんに少しでも安心してもらう事ぐらいしか出来ない。


 けどそうやって山田さんがこれからを進んでいきやすくなるのなら、私は何も出来ないけれど無言の気持ちだけは伝えられると思ったから。


 気持ちが伝わったかは分からないけれど、山田さんも私の手を握り返してくれて、少しづつ温もりを取り戻している山田さんの手から実際の温もり以上の物を私は貰った気がした。

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