第13話 立山へ
「その魔女は、一生やっていける仕事なの?」
「一生というか、一応50歳定年になっている。その後は次の魔女のフォローぐらいで早期隠居生活という感じだな」
「それで食べていけるの?」
「ああ、食うには困らない。大昔からの一族のお金が支給されるし、食料は一族の者が届けるし、魔女の家では生活費はかからないからな」
「ふーん、じゃあやろうかな」
「そうか!やるか!って簡単に決めすぎじゃないか?」
「私の将来の一番の不安は、一生生活に困らないかどうかなの。その不安が無いならやってみたいなと思う。それに、魔女という言葉を聞いてしまったらそれがどんなものか、何をするのかとか気になるし興味をそそられるじゃない」
そうやって私は約一年前に魔女になる事を決めた。
担任の先生には、親戚のやっている家業を継ぎますと進路を問われた際に応えた。それがどんな職業なのかまでは興味が無いのか、個人情報と思ったのか聞かれなかった。
そして私は魔女になるために立山連峰に向かっている。
私が魔女になるための修行をするのが決まったのは、高校三年になったばかりの頃だった。
私は日本の魔女の一人、冬の魔女の一族の者らしい。まだ私にもさほどの実感が無い。
現在の冬の魔女は、私のお父さんの妹でつまり叔母さんだ。
雪山に住んでいるし冬の魔女なんて名前だから雪女を想像していたら、もっとポッチャリしている愛嬌のある叔母さんだった。というか私、この叔母さんに今まで何度か会った事がある。
でもその時は、叔母さんが魔女である事も、うちがその一族である事も知らなかった。
魔女によって修業年数が違うらしいのだけど、うちの場合は五年だ。だから23歳になった時に私は一人前になれる。
私は立山初心者なので一般の人が入れる四月に入ってからやってきた。
叔母さんの住む家は立山連邦の奥にある洞窟なので立山駅からは歩いて行かなければならない。
そんな場所に初めてで、一人では行けないので立山駅に叔母さんの息子くんが迎えにきてくれている。この従兄弟の雄くんとは昔から何度も遊んでいるので知らない場所に行く時にとても心強い相手だ。
そういえば今にして思うと雄くんのお母さん、つまり魔女はお正月の集まりには来ていなかったなと思い出した。その頃は立山に籠っている頃だったんだろうね。
けどお盆にはいつも居たんだよね。魔女にも夏休みがあるのかな?
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