第10話 滅んでいない?
「前にローズ族の話をした事があったでしょう? ローズ族は奴隷にしていた黒髪の人たちによって滅ぼされてしまった。けれど、レモン族がどこかの人たちによって滅ぼされたって聞いたことがないわ」
「はい。滅ぼされてはいなくても、お父さんが言っていたように自分たちの国を追われ、私の故郷の人たちに迫害されて消えていったのかな、と」
だって、あんな酷い扱いを受けていたんでしょう? きっと私が受けたものよりもっと酷かったんじゃないのかな。
「アイラさんの故郷では迫害を受けたかもしれないけれど、他の国では違うんじゃないかしら。ね? アイラさんだって学生時代には何の差別も受けなかったんでしょう?」
そういえば……。
「ということは、もしかたらどこかの国で少ないながらもレモン族はまだいるってことなんでしょうか……」
「あり得ると思うわ。とはいうものの、もしかしたら他の香らない一般の人たちと結婚をして、純粋なレモン族の人は減っているということもあるかもしれない」
レモン族は滅んでない? ローズ族が滅んだという話を聞いてからレモン族も、もしかしたら滅んだんじゃないかと思えていた。
何だか複雑な気分。自分と同じ香りを持つ人たちに会ってみたいという気持ちもあるし、もうこの髪と香りを思い出すものとは関わりたくないという思いが入り混じっている。
「そっか、私にレモン族のことを教えてくれた先生は『この辺りでは珍しい』と仰ってた。つまり、どこかレモン族がいてもおかしくない国が、町があるってことの言い方にも聞こえますよね」
「そうね。ただ、うちの一族みたいに一般の人と結婚する人がいても、一族同士の結婚も無くならないというのは稀だと思うから、どんどん純粋なレモン族の人が減ってしまっているということも考えられるかもね」
純粋なレモン族が減っている? そうかもしれない。レモン族同士ばかりが結婚するとは限らないから。
「ほら、出来たよ」
コットンさんが麺を仕上げてラーメンを出してくれた。
「美味しそう」
「話の途中になっちゃったけど、まずは食べて。私の作ったスープとコットンの打ってくれた麺で出来た自慢のラーメンよ」
スープは薄い黄金色のよう。香りが独特なのに何故だか食欲をそそる。
「これはね、とんこつラーメンって言うんだ。もしかしたらアイラさん初めてだろう? ミキの作るとんこつスープは絶品なんだ」
ちょっと変わったスプーンにすくって飲んだスープは今まで味わった事が無い、とてもとても美味しいものだった。
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